クオータ制による新任者という、アウトサイダー的な立場と独立性も、取締役会に変化をもたらす強い要因となっていた。既存の緊密な人間関係に割って入ることで、役員・CEO・上級幹部らのつながりに変化と広がりが生まれた。またクオータ制は、取締役会の閉鎖性や内輪びいき(自分のネットワーク内の人間ばかりを重用する傾向)の軽減にも寄与した。ただし今後の研究課題の1つとして、時間が経つにつれて女性がアウトサイダーとしての立場を失い、その効果も消えてしまうのではないかという疑問は残る。

 ディア教授の興味深い発見によれば、新任の女性役員たちは、自分が「クオータ役員」として白い目で見られるのではないかという懸念は持たなかったという。その理由は主に、十分な数の女性役員がいたこと、そして名目だけの地位ではなかったことだ。

 性別の多様性が取締役会の業務、ガバナンス、集団力学に及ぼす効果について、ディア教授は一連の調査結果を以下の7点にまとめている。

●対話の活性化
●反対意見の尊重などによる、意思決定力の向上
●リスク軽減と危機管理の向上。リスク容認姿勢とリスク回避姿勢のバランスの改善
●経営陣に対する監視およびガイダンスの質の向上
●取締役会の環境・風土におけるポジティブな変化
●取締役会の業務の秩序化
●男性役員の態度・行動におけるポジティブな変化

 ただし、課題がないわけではない。意思決定が長引く、最初のうちは結束力が弱まる、異なる視点が多く持ち込まれることで軋轢が増える、などの例も見られた。また経営陣には、取締役会からの質問にしっかり準備を整えておくという必要が生じた。さらに、多様性の高まった取締役会が適切に運営されず、不信や不満が生まれたケースもあった。旧知でない新参者を警戒するという、集団につきまとうバイアスがその一因だ。

 キャサリン・W・フィリップス(コロンビア大学ポール・カレロ記念リーダーシップ・倫理学講座教授)などの研究によれば、同質性の高い集団は多様性の高い集団に比べ、最善の解決策を見出すことが難しいという(英語記事)。そして自分たちの策が最善であるという思い込みが強い。一方で多様性の高い集団は、(意見の対立を警戒して慎重に検討するため)より良い解決策にたどり着くが、それが最善であるという自信をさほど持たないという。

 取締役会の女性増加に向けた各種の提案や現行の施策をめぐって、熱い議論が戦わされている。そうしたなかでおそらく確かなのは、ディア教授の次の指摘だろう。「性別に基づいて取締役会の編成を強制的に変えることで、ガバナンス体制における旧来の秩序が揺さぶられた。そして、市場を基盤とする組織で権力や特権を享受してきた既存の階層が乱された」

 言い換えれば、女性を増やすことで、取締役会の力学とガバナンスには確実に変化が起きるのだ。取締役会のリーダーや企業が、役員構成の同質化を廃し多様性を高めようと本気で考える時、何が起きるのか。ノルウェーの事例はそれを考える手がかりとなる。


HBR.ORG原文:Women Directors Change How Boards Work February 17, 2015

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ローラ・リズウッド(Laura Liswood)
世界女性リーダー評議会事務局長、およびゴールドマン・サックスのシニアアドバイザー。著書にThe Loudest Duck: Moving Beyond Diversity while Embracing Differences to Achieve Success at Work (Wiley & Sons)がある。