新たに立ちはだかる既存の効果検証の限界

 しかしながら、ここでマーケターの目の前にはまた別の課題が立ちはだかる。デジタルテクノロジーによってダイナミックに変化するきめ細やかなマーケティング施策を実現したとしても、従来の方法論でその効果を検証しようとすると、次のような課題に直面することになる。

●すぐに結果を把握することができない(スピード)
 現在、リーチ計測のような行動ログで把握できる課題であれば、誰にどれだけ届いたのか、ある程度の速さで分かるようになってきている。ただし、ブランドの認知度や好感度の向上を目的とするブランドキャンペーンでは、アンケートによりそれらを確認することが不可欠である。通常、調査会社が保有する調査協力パネルを活用してこのようなアンケートを行うが、その結果が報告されるまでには、調査終了後、数週間以上かかることが多い。スピード感を持ってマーケティング施策を柔軟に変更しようとする場合、このリードタイムが大きなボトルネックとなる。

●多様な個別施策ごとの検証ができない(粒度)
 従来の効果検証では、先述の通り調査協力パネルの中から数千人のアンケートを集めるというのが一般的だ。かつてのマス中心のキャンペーンでは、この方法でも問題がなかった。なぜなら、一度のキャンペーンリーチは数千万人に達し、全ての人へ同じメッセージが届くため、限られたサンプルサイズでも十分な該当者を見つけることができた。しかし、多様なユーザーごとにマーケティング施策を細くしていくと、個別の施策単位では十分な該当者が見つからず、限られたサンプルサイズでは統計的に信頼できる結果を得ることができなくなってしまう。

●キャンペーン最中に効果検証ができない(頻度)
 また従来の方法では、調査協力パネルのそもそものパネルサイズにも限界がある。公称では百万人を超えるパネルサイズがあったとしても、実際にアンケートに回答する可能性の高いアクティブなパネルはそれよりもずっと小さくなる(数万から大きくても数十万人程度)。ユーザーの「今」を適切に捉えられているのかを検証するために、キャンペーン期間中に何度も調査を実施してしまうと、フレッシュなサンプル(一度もアンケートに答えていない人)はどんどん少なくなってしまう。

 これら効果検証の「スピード」「粒度」「頻度」に関する課題があるため、ブランドキャンペーンの効果検証は、年間で数回、あるいは1キャンペーンにつきプレ・ポストに1回ずつなど、大掛かりなものになりやすい。多様な生活者の共感を得て、今を捉えたメッセージで注目を獲得するダイナミックなマーケティング施策が技術的に可能になったとして、それを正しく検証することができなければ、明日からの施策に活かすことはできない。

 マーケティング施策の複雑化に合わせ、きめ細かい粒度でリアルタイムに効果を測定しなければならないというデジタル時代のブランドマーケターの課題を、我々は「効果測定の俊敏性(Agility)」と呼んでいる。