アライアンスによって女性のチャンスがもっと増える

篠田:ちょっと視点を変えましょう。私は子どもが2人いますが、子どもが生まれてからもちゃんと仕事したくて、どうすればいいのか悶々としていた何年かの間に、結果的にアライアンスに近い考え方ができるようになったんです。その経験から、働く人の側もキャリアづくりを企業に依存するのではなく、自分はどのような形で仕事をしたいかとイニシアチブを持つべく、腹をくくる必要があると考えました。それができると、結婚や出産など女性のライフイベントを抱えつつ仕事をしていくときにプラスになると思ったんですね。

君島さんは、女性の働き方とアライアンスの関係についてどう思われますか。

君島:正社員で働いている女性に限って言えば、かなり受け入れられやすい考え方のような気がします。

 ただ、企業側はまだまだマタハラ(マタニティ・ハラスメント)があります。妊娠したために望まない職種に移されたり、不遇な状況になったり、我慢されている方もたくさんいます。企業側に120%コミットし、企業のあるべき人材像に向かって頑張ると言わない人の扱い方が、企業はまだわかっていないのでしょう。女性側がアライアンスを受け入れたとしても、会社側はまだまだだと思います。

篠田:なるほど。全人格的にコミットするか、そうじゃない人は定型業務しかないという発想ですね。その間にある形が想像できない。

 うちみたいな中小企業で、必要な人を採用するのにかなり労力がかかる立場から見ると、大企業は人が足りているんですね。人が足りないとか、頭数はいても本当に必要な人がいないという切迫感がないのかな。

君島:私の部署でスタッフを雇うとき、子育て中の人でも時短勤務でもいいという条件にしたところ、非常に優秀な人が集まりました。この金額でこんなにすごい人がくるのかと驚きました。日本企業は、よっぽど女性を扱うのが下手で、優秀な女性を放出しているんでしょうね。さらに言えば、女性の多くは、結婚や出産でいったん労働市場から出てしまいます。アライアンスという考え方で働いていれば、労働市場から退出することなくもっと成長し、多くのチャンスに巡り会っていたかもしれません。

篠田:この本のまえがきにも書いたんですが、私はもともと終身雇用と思わないで入社した跳ね返り社員だったんです。さはさりながら、入社7年目で自分のいた企業(編集部注:日本長期信用銀行)が国有化されて消滅するという体験は、相当インパクトがありました。立派とされていた企業が潰れる劇的な体験をすると、個人としては終身雇用が終わりを告げ、アライアンスという考えに移行していくという考え方がすんなり入ってきます。

君島:もう、多くの企業がそういうことを避けて通れないと思いますよ。むしろ、終身雇用でとりあえず人を抱えている日本企業の生産性の低さのほうが心配です。冒頭にお話ししたように、いらない人に何でそんなにお金を払っているんですかと言いたい。このままでいくと、日本企業の凋落は歯止めが利かなくなる。それを避けるための処方箋のひとつとして、この本は非常に興味深いですね。