篠田:アライアンスとは長期の信頼関係です。会社と社員が互恵的な関係をはぐくみ、、雇用契約が終わった後も信頼が長く続くことを目指します。そのためには、会社は、働く人の強みや興味の方向性、価値観などを精緻な解像度で見なければなりません。終身雇用だと、年齢や性別や社歴などの数値データで簡単表せる属性を中心に見てしまい、詳しく一人ひとりを理解しようとする動機が生まれない。一方で、グロービスさんのような企業は、テーラーメイドの解像度でひとりひとりと付き合う関係が成り立つんですね。

君島:ただ、こうした契約形態を設計しているのは、グロービスの中でも私が担当する講師部門だけです。ほかの部門は正社員を想定しているので、かなり切り離された世界観かもしれませんね。

篠田:面白い。そのような雇用関係の濃淡が必要だという判断が、経営陣や人事責任者にあるということですよね。そこまで手間をかけるのは、企業にとって大きなコストをかけることになります。でも、そういう環境を作ることが事業にプラスになることをわかっている。

君島:終身雇用では、全人格的なコミットメントと成長が求められます。時間的な拘束だけではなく、企業の求める人材像になれと迫られるんですね。グロービスでは四半期ごとに目標管理(MBO)をしていますが、他の部門のMBOでは、アウトプットだけでなくその人の行動や自己成長なども話し合い、グロービスのあるべき人材像に向かうように育成しています。でも、誰もが同じ人材像に向かって成長したいわけではないと思うんです。もちろん私のところもアウトプットだけはガッチリ握りますが、それ以外は管理しません。彼らはやるべきことをやり、勉強にも熱心に取り組み、学会に出かけて多くの先生とネットワークを作ってきます。放っておいても、グロービスの企業価値を高める行動をしてくださるのです。もちろん信頼できると見込んだ人しか対象にしていないからできることなのかもしれませんが。

篠田:グロービスさんのように、事業の価値を生む源泉が人的ネットワークを含めた個人に依存するタイプの事業では、こういうことが起こってくるのかもしれませんね。