3.組織内の抵抗勢力による埋没(現場の“やらされ感”)

 経営トップ直轄で変革施策が着手されたものの、組織内の至るところで明らかな抵抗に遭遇する場面はよく起こる。規模の大小はあるものの同一組織内における部門の壁や現存の制度・ルールとの間で、変革の方向性と既存の考え方の隔たりは必ず発生する。
 例えば、新規事業を立ち上げイノベーションを起こす変革をしたいとする。新規事業のためのリソースや投資判断は既存事業とは異なるべきもので体制上はトップ直轄で位置付けられるのが通常だが、実際には、現実的なリソース制約から、携わるメンバーは既存事業からの兼務・出向で構成することは珍しくない。
 その場合、組織内の権限や人事評価は既存ルールで行われるため、いくらよい事業アイデアを出しても、いざ実行する段階になると既存事業部門にとって一部不利益になると反対される、あるいは、既存事業のメリットにならないと管掌下にある投資や権限が制約されるなどの抵抗が生じる。社長直轄といえども、既存組織の権限や人事評価上の処遇までを動かせないならばその展開に広がりを欠くのは当然である。
 加えて、それらの各種の抵抗を受けながら強力に推し進めるとすると、各方面での軋轢が高まり現場での“やらされ感”は一気に高まる。
 実は、この“やらされ感”は、変革を推進する側も、指示を受けて対応する側も個人レベルでは双方にとって起こりうる。変革プロジェクトに関与する主要メンバーは、既存業務で重要な役割を負っていることが多く、変革プロジェクトに兼務で関与する場合がほとんどだ。
 現業に加え負荷やリスクが高まる一方で、プロジェクトの成果が見えにくく明確な評価につながらないことも多い。いわば変革推進側であっても、報われない徒労感を抱えながら「組織の命令だから」という心理的に抵抗感を持つことが、変革のエネルギーを次第に低下させていくのである。

いずれの失敗も
根本的原因は“断絶”にある

 これらの変革が失敗に終わる根本原因は要素間での“断絶”、いわば“つながり”の欠如にある。

 1のモチベーションの低下、いわゆる「変革疲れ」が蔓延してしまう背景には、過去から現状に至る変革の経験を、組織の中でしっかりと総括しきれないままに将来に向けて同類の取り組みを繰り返すことにある。過去に取り組んだ変革の成果や教訓を組織内で共有し学習することなくして、将来にわたって成果を残し続けることは期待しにくい。つまり過去から将来に向けた時間軸の中での「断続」が生じてしまうのである。

 経営者の交代や経営計画改訂のたびに新たな変革プロジェクトが起こり続けたとしても、過去から現在に至る過程で根ざしている失敗体験など、時間軸における断絶をどう解消するかは、変革成功の上で大きな課題である。

 2つ目の市場変化のスピードに間に合わず、変革が内向きに陥ってしまう背景には、市場環境や顧客ニーズなどの外部の環境変化のスピードと、それに対する組織の適応力との間に生まれる断絶がある。あらゆる変革への取り組みには相当なエネルギーを要する。いつのまにかそれらが変革の取り組み自体が目的化し内向きの方向に行きやすく、結果的に外部に対する成果や影響を忘れがちになる。

 3においては、いざ組織内で変革を実行する上で、既存の既得権益との対立、現存組織、制度ルールの制約を解消する努力なくしては解決できない。変革は未来志向のものであるがゆえ、過去から現在にわたり根強く定着している組織・制度ルールとは時として隔たりを生む。その上で、変革を進めようとしても、一方的なやらされ感や責任の押し付け合いなど組織内でマイナスの力が高まり、組織と個人の心理的側面でも断絶が高まることになる。

 これら3つの失敗事象の背景には、それぞれの文脈で「断絶」が存在する。それは、過去から現在、そして将来といった「時間軸の断絶」、顧客や取引先など外部環境と組織の間に存在する「市場との断絶」、そして、同一組織内であっても、経営と現場、部門間など利害や立場が異なる間に発生する「組織内の断絶」である。

 過去から現在に至る失敗経験に基づく失望、将来の変化への心理的拒絶などの時間軸を超えられない隔たり、外部の環境変化と組織の変化スピードとの隔たり、組織内における部門や立場間での隔たりなど、変革は時間軸、市場、組織内の3つの文脈における断絶を越えることなくして、成功裡に進むことはありえない。