またカタログには、マーケティング部門の目標達成に資する、カタログならではの機能がある。マーケターにとって、取り組みの費用対効果を具体的に測ることはますます困難になっている。スポットCMやソーシャルメディアでのキャンペーンがどれだけ売上げに貢献したか測定するのは難しい。しかしカタログなら、郵送日や顧客データ、ソースコードが明らかなので追跡が容易だ。小売業界に存在する、膨大な世帯のあらゆる情報を含む巨大なデータベースのおかげで、カタログによるターゲティングも以前と比べてはるかに容易になった。しかもオンライン購入のおかげで、多くの企業が自前の顧客データを蓄積しており、それを業界のデータベースと組み合わせることができる。それによって、適切なカタログを適切な顧客に届けられるのだ。

 さらに、紙媒体の製作・印刷技術の進歩によって、「バージョニング」が低コストかつ容易にできるようになった。バージョニングとは印刷用語で、顧客セグメントごとに内容を一部変えて別バージョンのカタログを用意することだ。アウトドア用品とアパレルを販売するL・L・ビーンは、同社ウェブサイトでオンライン購入する常連客に何ページのカタログを送ればいいか実験しているという。最高マーケティング責任者のスティーブ・フラーの説明によれば、すべての顧客に1種類の分厚いカタログを送るのではなく、まずウェブサイトの常連客を特定する。そして、それぞれの客に「そうだ、L・L・ビーンのウェブサイトを見なきゃ」と思い出してもらうためには何ページにすればよいか、50ページか、それとも20ページにすべきかなどと検討するのだという。

 小売企業はまた、質の高いコンテンツ・マーケティングにカタログを利用できることにも気づいている。さまざまなストーリー、ファッションショーの写真、著名人のユーザーやデザイナーのプロフィール、部屋のレイアウト――。コンテンツが盛りだくさんの洗練された印刷物は、ブランドの価値観と個性を伝える優れた手段であることが立証されている。たとえばキッチン用品のウィリアムズ・ソノマのカタログは、商品の隣にそれを使って調理するレシピを載せている。レストレーション・ハードウェアは、カタログによるブランド構築を芸術の域にまで高めている。同社の2014年版カタログは13分冊で構成され、豪華な写真、デザイナーや職人のプロフィール、琴線に触れるストーリー、そしてもちろん商品が、3300ページにわたっているのだ。

 この贅を尽くしたカタログは、同社の会長兼CEOであるゲイリー・フリードマンによれば、「愛するに値するブランドになる」ための努力の一環である。「当社が目指しているのは、顧客と知識上のつながりを超えて、感情的なつながりを築くことです。当社が深く信じているものを、目に見える形で表現しようという試みを始めているのです」

 景気が再び下向きになっても、このように高いレベルで顧客と絆を築く努力は必要であり続けるだろう。今後ますます似たような商品が巷にあふれ、インターネットによってあらゆる商品へのアクセスが可能になる。その過程で紙のカタログとそのコンテンツは、ブランドを差別化し既存の顧客関係を維持する手段として成長していくはずだ。優れた企業は、eメール・マーケティングやソーシャルメディアを含む複数の施策をカタログと連動させることで、他社と一線を画し、記憶に残り、価値のあるブランド体験を顧客に提供するのだ。

 カタログは時代遅れのように思えるかもしれないが、その機能はかつてより強化され、ブランド構築における大きなポテンシャルを持っている。今後も重要なツールとして、小売企業の引き出しから消えることはないだろう――そして、消費者の郵便受けからも。


HBR.ORG原文:Why the Print Catalog Is Back in Style February 25, 2015

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デニス・リー・ヨーン(Denise Lee Yohn)
ブランド戦略のコンサルタント。ソニー、フリトレー、バーガーキング、ノーティカなど数々の世界的企業を支援している。著書にWhat Great Brands Do(Jossey-Bass)がある。