トライセクターでのリーダーシップの結集

藤井 このように社会課題解決型の都市再開発を進めていくには、都市を構成するプレイヤーが様々いる中でのリーダーシップが必要です。東京では、各エリアの開発を主導する不動産デベロッパーなど、ビジネスセクターが自らリーダーシップを発揮し、東京都と連携しながら各エリアでの開発を進めているという構図が特徴的です。

白井 ヨーロッパの都市では、歴史的に、パブリックセクターによるトップダウンでの都市開発が行われきた例が多いと感じます。例えば先に挙げたパリでは、19世紀後半に知事のジョルジュ・オスマン氏によりトップダウン型の大規模な都市計画が進められ、凱旋門から放射状に大通りを作り、中世からの複雑な路地を整理したという歴史が今も受け継がれているように感じます。
 一方で東京は、ビジネスセクターが各エリアの設計を主導するので、東京周辺の各エリアが均質化せず、それぞれ特徴を出した都市開発になっているといえるかもしれません。異なるエリアが独自のアイデンティティを持ち、その集合体を東京と呼ぶという前提であれば、より各セクターの活力を最大化できると思います。

藤井 ソーシャルセクターの果たす役割はいかがでしょうか。例えば都市の中長期的な課題解決を持続的に行っていくためのエリアマネジメントにおいて、ソーシャルセクターへの期待が高まっています。

白井 ますます重要になっています。オリンピック・レガシーという観点でも、ソーシャルセクターの果たす役割は大きいです。
 バルセロナについていえば、1992年に市長を務めていたパスカル・マラガル氏が、都市のパブリックスペース再構築の必要性を認識し、オリンピックをきっかけとして再生を主導してきたことが、オリンピック・レガシーの成功要因の1つとして言われています。その中で、市が、オリンピック後の都市の様々な課題解決とその継続運用において、ソーシャルセクターを巻き込みながら、局所的なプロジェクトを線でつなげていったことも重要なポイントといわれています。
 民間企業でもエリアマネジメントを行う箱を作るだけならできますが、そのエリアの中長期的な維持・発展が自律的に行われるメカニズムを作るためには、ソーシャルセクターの存在が不可欠になってきています。

藤井 東京オリンピック後の2020年以降は、高齢化、人口・労働力減少など、世界に先駆けるインパクトある社会課題が本格的に顕在化していきます。先見の明を持ったパブリックセクターのリーダーシップが必要であることはもとより、ビジネスセクターやソーシャルセクターなど民間側も自らリーダーシップを発揮し、トライセクターで連携して大きな社会課題に挑んでいくことが必要でしょう。
 都市という単位でイノベーションを仕掛けていくことは、様々な規制・ルールの存在や多様なプレイヤーの利権が複雑に絡み合った構造的問題からハードルは高いですが、今こそオリンピックという“御旗”を活用できる千載一遇のチャンスでもあります。これから1~2年が、オリンピックを契機に東京で都市イノベーションを仕掛ける勝負の期間となりそうですね。