天才になろうとする人間から、天才をつくる人間に変わる

 多くの欧米企業と異なり、日本では労働者の権利が強固に守られているため、人材の流動性は低い。雇用慣習の改善すべき点を議論し続ける必要はあるが、この慣習は今日、明日で変わるものではないことはたしかだろう。そのため、消耗型リーダーのように、優秀な人材が不足していると嘆くよりも、増幅型リーダーのように、埋もれている人材をいかに活用するかを考えるほうが生産的である。

 誤解されてはいけないが、増幅型リーダーは、部下を甘やかし、持ち上げるようなことはしない。彼らは、部下を信頼して仕事を任せるが、信頼に応えることも強く期待している。挑戦した結果であれば失敗を受けいれる度量がある一方で、挑戦そのものを否定する人間を認めることはない。常に自己判断を求められる点においては、消耗型リーダー以上に厳しい存在であるともいえる。

 優秀な選手が優秀な監督になるとは限らないことと同様に、自分が圧倒的な創造性やカリスマ性を備えていなくても、部下の力を引き出すことに長けたリーダーはいる。筆者の言葉を借りれば、ここで登場するマネジャーの多くは、みずからが天才になろうとするのではなく、天才をつくる人間なのである。

 天才をつくる人間が歴史に名を残すことはないだろう。しかし、天才が世に羽ばたくうえで、欠かすことのできない黒子であることは間違いない。これからの時代に求められるリーダーシップの教科書としてはもちろん、影の立役者たちの姿を知ることで勇気をもらうことができる1冊でもある。