この研究では、アマゾンが運営するクラウドソーシングのマーケットプレイス、メカニカルタークの登録者たちにアンケート調査を実施した。メカニカルタークに発注される仕事は、広告用素材の評価から、バッハ作品の一覧表の作成まで多岐にわたる。そのため、「感情」と「認知力」を両極とした範囲に幅広いタスクがそろっている。

 実験ではこの特性をより明確にするために、タスク群を「論理的思考力が求められる」ものと、「感性と情緒的な能力が求められる」ものに分けて登録者に提示した。そして、それらのタスクをロボットが行うことについて一般論としてどう思うかを尋ねた。次に、自分が行うはずであったタスクをロボットに代行されたらどう思うかを尋ねた。

「結果からは一貫した傾向が認められ、私たちは驚きました」と、ノートンは報告してくれた。「回答者たちは、『考える』タイプの仕事(会計など)がロボットに代行されることにはある程度寛容でした。しかし『感じる』仕事(小学校教師など)のロボット代行をどう思うか尋ねると、はるかに強い反感を示す人が多かったのです。この傾向は繰り返し観察されました」

 だが、ある単純なリフレーミングによって感情面の反応を変えられることもわかった。「人々の意見は、わりと柔軟でした」とノートン。「教える仕事のボットソーシングについても、感情的スキル(メンタリング)よりも思考スキル(計算)を要すると説明した時には、同じ仕事でも反感が小さかったのです」

 ここに、企業が留意すべき重要な教訓がある。研究結果によれば、ロボットの職場導入を人々が歓迎しないことは間違いなさそうだ。したがって「ボットソーシングを検討中の会社は、可能であればその対象業務を、ロボットに適していると見なされることに限定するのが賢明です。つまり、心の知性(EQ)を必要としない仕事です」(ノートン)

 製造業であれ従来型の知識労働であれ、ロボットが労働力の一部になるとは、どういうことなのか。ノートンとウェイツの研究は、このテーマについて蓄積されゆく知識を補強するものだ。たとえば、ロボットのデザインが人の感情に大きく影響することは知られている。カーネギーメロン大学のある研究では、「スナックボット」と名付けられた人型のおやつ配達ロボットを職場に導入したところ、人々はこれを擬人化して信頼と親密さを築くことが明らかになった。のみならず、同僚同士の関わり方や組織のダイナミクスにも変化が生じたという。

 別の研究では、警備の仕事をするロボットの場合、男性の名前をつけられたロボットのほうが女性の名前よりも高い評価を受けるという結果が認められている。性差に関する偏見は、人工知能に対しても健在のようだ。