4.情報仲介業者に学びながら、顧客の主権を強化する

 金融市場では、顧客は基本的に自分の保有資金を把握しており、その投資状況を管理できる。だが個人情報市場では、顧客の主権はもっと制限されている。人々は自分の個人情報にどの程度の価値があるのか、それを誰が収益化できるかについて、ほとんど何も知らずにいる。個人情報市場が今後も持続可能であるためには、このような格差を埋めること、そして個々人が情報を共有する気になるようにインセンティブを提供することが必須条件と思われる。

 この問題に取り組もうと名乗りを上げているのは、主にスタートアップ企業だ。たとえばニューヨークに拠点を置くデータクー(Datacoup)は、ユーザーが持つ複数のソーシャルメディア・アカウントを連携させ、そこからユーザー本人が選択した情報へのアクセスを得る。その見返りに、1カ月当たり8ドルをユーザーに提供している(英語記事)。位置情報分析会社のプレイスト(Placed)は、顧客の居場所を追跡するアプリから収集される情報と引き換えに、5ドルまたは10ドルのギフトカードを顧客に提供している(英語記事)。またイギリスではハンドシェーク(Handshake)という個人情報プラットフォームを開発中で、実用化されれば、ユーザーは自分の個人情報およびパルス・サーベイ(意識調査)に回答するのに要した時間と引き換えに、お金を稼ぐ機会を手にする。テクノロジーに精通したイギリス人で、このプラットフォームを頻繁に利用する意思があれば、年間5000ポンドを稼ぐこともできるという(英語記事)。

 スタートアップ企業の例に倣って、既存企業も顧客報酬を提供することの価値に気づきつつある。実際、ターゲットやメイシーズ、JCペニーをはじめ多くの米小売企業が、位置情報を収集する買い物アプリのショップキック(Shopkick)と連携し、利用者に金銭的な報酬や割引を提供している。2013年だけで、このアプリは提携店に5億ドルの売上げをもたらした。

 いかなる市場にも不確実性はつきものだが、とりわけ発展の初期段階ではそれが顕著になる。個人情報の市場では、多くの重要な問いが残されている。若い世代の動向は、市場のダイナミクスをどう変えていくのか。世界各地の規制はこの市場を統合していくのか、分断を招くのか。顧客の懸念に対処するために、テクノロジーはどう発達するのだろうか。先が見えない航路を渡っていくに当たり、企業は何通りもの展望を見越して準備する必要があり、参考にできる他の市場の発展に学ぶことも求められる。重要なのは、個人情報を金銭と同じように賢く管理することだ。

HBR.ORG原文:If Data Is Money, Why Don’t Businesses Keep It Secure? February 10, 2015


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