このタイプを「私の理想の世界では、偉大なアイデアは誰もが実践できるプロセスを通じて生み出される」陣営と呼ぼう。この中で最もテクノロジー色が強いのはほぼ間違いなくインテルだが、スティーブン・エッピンジャーは2001年の論文「デザイン・ストラクチャー・マトリックス法」で、同社のイノベーション・プロセスが「情報の正確な交換」に基づいていることを詳述している。

 この陣営の多くが目指すのは、イノベーションという活動を創造的プロセスではなく生産プロセスに近づけることだ。ロバート・サットンとアンドリュー・ハーガドンが2000年の論文「イノベーション・ファクトリー:知を創発する組織への転換」で述べるように、そうすることで「より多くの、より優れたアイデア」を生み出すためだ。

 サットンとハーガドンは、一見ありふれているようにも思える次のプロセスを役に立つ形で詳述している。①多くのソースから優れたアイデアを引き出す。②それらのアイデアを死蔵せず、論じ合い、いじって遊ぶ。③古いアイデアの新しい使い方を考え出す。④有望なコンセプトを現実の製品やサービス、ビジネスモデルで検証する。

 ステファン・トムクは2003年の論文「バンク・オブ・アメリカ:サービスのR&D活動」の中で、バンク・オブ・アメリカが新しいサービスを開発するプロセスについて有益な詳細を記している。同行は支店網を創造的なアイデアの実験室として活用し、その規模は「さまざまな実験を支援できるほど十分に大きいが、ビジネスへのリスクを限定できるほど十分に小さい」という。

「レゴグループ:再生の組織戦略」によれば、レゴはイノベーションにおいてシステム化されたアプローチを最大限に活用してきた。P&Gも、「ニュー・グロース・ファクトリー」という体系的なイノベーションの取り組みをその極みまで高めている。インテュイットは一周して、自社の誰もがピクサーやディオールやIDEOの才能あふれるプロフェッショナルと同じように創造的な思考を持てるように、社員を教育するというプロセスを制度化した。ロジャー・マーティンが「イノベーション・カタリスト」の中で活写しているように、この名高いプロセス(マネジャーたちがイノベーションの触媒となって全社に改革を推進する)には、システム思考と同じくらいの気概と粘り強さが必要になるという。このことは、シュレーグの警告――「デザイン志向の文化を体系的に生み出すことはできても、それをうまく根付かせるのは難しい」という言葉を思い起こさせる。

 こうしたイノベーションのプロセスにはしかし、希少な人材に頼る方法と同じように、他社が真似できない難しいものもある。この点が気になったスコット・アンソニーは思案した。P&Gのようなリソースも、ジョン・ガリアーノのような創造力に富む天才も持たない組織が、イノベーションへの確実な道を進める必要最小限のステップは何か――。

 アンソニーと彼の同僚たちは、「イノベーション体制をたった90日で構築する」の中で4つのステップを提示している。このプロセスに従ってもすぐにP&Gのような企業にはなれないし、必要最小限といってもそれほど単純ではない。最初に、イノベーション・リーダーと経営上層部は全社的な戦略におけるイノベーションの位置づけを明確に把握し、目指すべき方向性を決める。次に、多数の見込み顧客が真に必要としており、自社ならではの強みを活かして提供できるものを、2~3の分野に絞って選ぶ。その後、少人数の専任イノベーション・チームをつくり、これを支援する幹部を指名する。