マスメディアはどうやってエンゲージメントを獲得するか

上記のように発信者としての生活者が影響力を増す一方で、従来の発信者であるマスメディアの中にも多くの視聴者の共感を得て、エンゲージさせることに成功しているケースが多くある。その好例が「テラスハウス」だ。

ウェブ上で拡散させるための、凝縮されたネタの提供
 テラスハウスは、2012年10月から2014年9月末までの約2年間、フジテレビ系列で放送された、男女6人の共同生活を追う人気リアリティー番組である。毎週のテレビ放送開始後、同番組のYouTubeチャンネルでは、出演者のインタビューや追加のストーリーなど 30 分間の放送時間内にカバーされなかったコンテンツが毎週配信された。多くの視聴者が、ウェブ上で共有したことで、番組の放送を見ていない人々にも番組の内容をフォローできる動画が視聴者に拡がった。

 また動画以外でも、ソーシャル上で拡散させるための元ネタとなる追加コンテンツが豊富に制作者側から用意された。これらのコンテンツは、各出演者のキャラクターの詳細等を裏エピソードとともに伝えたことで、視聴者による理解と、共感を深めることにも成功した。

視聴者がライブ感覚をもって参加し楽しむための「コンテンツの双方向性+リアルタイム性」
 また、出演者たちが自身の SNS上での評判をチェックする映像など生の表情を入れ込み、視聴者によるリアルタイム性の高い反応も獲得した。この結果、出演者や番組の公式 SNS アカウントのフォロワー数も急増し、中には初出演後一晩で数百人から数万人にまで増えることもあった。

 テレビ放送自体は23時台と遅い時間帯ながらも、最高視聴率は 9.1%を記録、毎週更新された動画の合計視聴回数は2億5 000万回、公式チャンネルをフォローするチャンネル登録者は 50 万人を超える等、テレビとインターネットという境界を超えて、視聴者から高い支持を得るコンテンツとなった。

 なお、テラスハウスによるインターネット活用は、番組放送終了後も継続され、今年2月公開の劇場版のプロモーションとして予告編動画がYouTubeに掲載された後、放送終了後の出演者の姿や新メンバーの紹介等、「オリジナル動画」が公開日まで毎日掲載された。下記のグラフで赤の細い棒グラフで示されているとおり、連日のオリジナル動画の継続掲載は、視聴者による映画本編への高い関心を喚起し、映画公開のタイミングで、テレビ番組放映中を上回る視聴回数を記録した。また映画本編も高い評価を得て、テレビ、インターネット、ソーシャルメディア、映画館、とマルチスクリーンで多くの視聴者がコンテンツとエンゲージする結果となった。

 YouTube テラスハウスチャンネルにおける動画の視聴傾向と掲載本数の推移(2014年9月〜2015年2月)

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出典:YouTube テラスハウス公式チャンネルの動画視聴回数及び、動画掲載本数データ(2014年9月〜 2015年2月)