バフェットに見えて
東芝に見えなかったもの

 日本企業の多くが自信を失っているように見えます。確かにこの四半世紀というもの、過去の成功体験に縛られて、変わろうとして変わり切れずに成長を逃してきました。いまやグローバルで通用する日本企業は数えるほどしかありません。

 ハーバード・ビジネス・スクールの授業で使うケースのうち、中国やインドの企業に関するものが日本企業のケース数を超えたのはもう何年も前のことです。日本に学ぶことはないと思われていると受け止めざるをえません。

 本当に日本の経営には、世界の手本となるようなものは何もないのでしょうか。けっしてそんなことはありません。日本にはまだ宝物のような企業や技術、人材や知恵がたくさんあります。ただ、自信を失っているがゆえにその本当の価値に気づけずに、世界に発信することができないでいるのです。

 世界的な投資家のウォーレン・バフェットが、「ダイヤモンドに勝るとも劣らない人類の宝」と高く評価する会社が福島県いわき市にあります。超硬工具大手のタンガロイで、かつては東芝の傘下にありましたが、2008年にバフェットが大株主であるイスラエルのIMCに買収されています。

 その企業にしか出せない価値があること、そしてその価値を20年、30年経っても変わらずに出し続けられること。この2つを基本的な投資基準とするバフェットが、タンガロイを投資するに十分値する企業であると認めていることは、次のエピソードが証明しています。

 東日本大震災の8カ月後に、81歳にして初めて日本を訪れたバフェットが真っ先に足を運んだのは、タンガロイの新工場の竣工式でした。そして同社は、リーマンショック後というタイミングにもかかわらず、自身がIMCに対して投資をうながした「宝物企業」だったのです。

 もしも東芝の傘下のままであれば、新工場は建設されていかどうかわかりません。バフェットには見えて、東芝には見えない価値があったということでしょう。