言葉にすると簡単ではあるが、仕事ができる人であっても、このエッセンシャル思考を実践するのは難しい。できるが故に、「やらなくては」と思うことや「やってください」という頼まれごとが増え、結果的に自分の判断で仕事をコントロールし難くなる。いつの間にか、自分で判断することを放棄して、誰かの言いなりで仕事をこなしてしまうのだ。

自分の人生を自分でコントロールする

 エッセンシャル思考の効果は、仕事の効率化だけに留まらない。考える余裕を生み出すことは、考えて判断を下すことに繋がる。そしてこれは、自分で自分の時間や人生をコントロールすることへと繋がっていく。

 本書に出てくる「選ぶ能力はだれにも奪えない。ただ、本人が手放してしまうだけだ」という一文は示唆に富む。時間や膨大な作業に追われていると、よく考えることなく、示された選択肢の中から判断を下しがちだ。しかし、仕事においてもキャリアにおいても、私たちは選択肢のなかから「選ばないことを選ぶ」ことも、本来は可能である。

 「自分のための時間を確保することで、人生の主導権を取り戻せる」。これがエッセンシャル思考の最大の効用なのかもしれない。

 最後に、『エッセンシャル思考』は日本でも10万部を突破するなど、ヒット作となっている。好評を受けてか、彼の前著である『メンバーの才能を開花させる技法』も、今年4月に邦訳が発売された。チームや組織を引っ張るリーダーたちには、こちらもおすすめしたい1冊である。