ワーディングセンス

 グローバル企業は、ここまで紹介した4つのポイントそれぞれを、軽重はありながらも実行している。そして、もう1つ付言するならば、それらをシンプルに表現していることも共通する。偶然ではあろうが、前回取り上げたデュポン、シーメンス、ボッシュともに4つの言葉でまとめ、社外に向けて発信するとともに、社内の隅々に浸透させている。

 メガトレンドを読む際には、大量かつ多種多様な情報をインプットとし、それらがどのような影響を与え合うかを分析するのだから、そこからのアウトプットは本来的には複雑で難しいものになる。であればこそ、社内外をその方向に導くためには、シンプルなメッセージやストーリーで伝えるワーディングセンスが求められる。

日本企業の「現代的な」長期経営に向けて

 日本的経営は、長期的視点に優れているといわれてきた。しかしながら、メガトレンドを読み解くことの意味、すなわち、「経営の持続性を高めること」と「高い利益を獲得し続けること」は日本企業が直面する大きな課題である。

 日本が得意としてきたのは、静的な時代、つまり、世界が目指す発展や豊かさの方向性が明らかで、日本や自社がそれにどのように貢献するかが自明だった時代の長期的視点である。不確実性が高まり、「変わっていく」ということだけが確かともいえる現代において、時流に遅れず適時に、さらには先んじて潮流を作り出し転換を図るためには、その方向性から自身で見定めていかなければならない。

 そして、見定めた方向性に舵を切るには、冷静な、時に冷徹にも映るポートフォリオマネジメントが欠かせない。足し続けるだけの転換は、結果、不幸を招く。いくつかの日本企業が経験しているように、追い込まれてからではなく、早めの引き算が英断になるのである。この判断が適時適切であれば、働き手である社員にとっても後ろ向きな結果にはなるまい。

 ここで挙げたグローバル企業の事例とメガトレンドを取り入れるポイントは、かなり充実した理想形といえるだろう。そのため、すぐにフルセットで導入するのは難しいかもしれない。それでも、グローバリゼーションが進展し、複雑化・不透明化した環境下における「現代的な長期経営」を叶えるために、日本を代表するような企業にこそ、メガトレンドに本気で、真摯に、向き合っていただきたい。それは、少子高齢化局面にある縮む日本国全体にとってのリソース最適化にもつながっていくだろう。

参照)
Shell Website, New Lens Scenarios等
IBM Website, Global Innovation Outlook, Annual Report, RIETI「IBMにおけるイノベーション創出の仕組み」等
Unilever Website, Unilever Sustainable Living Plan, Annual Report等
DuPont Website, Annual Report等
Siemens Website, Annual Report等
Bosch Website, Annual Report等