企業行動へ落とし込む

 勝負を決める一番のポイントは、実際の企業行動に落とし込めるかどうかである。経営を取り巻くメガトレンドと、自社の強みを合わせて、戦うべき立地を決めるのだ。これにより、読み定めたメガトレンドに沿っていち早く動き、ゲームのルールを作ることを含めて、他社に先んじることが可能となる。

 デュポンでは、Differential Managementという経営資源配分の優先順位を決定する仕組みとメガトレンドが対応しており、研究開発費と設備投資について、年度ごとに割合は変動するものの、その多くを将来の成長分野と見込んだ事業に注ぎ込んでいる。M&Aでも、食料不足などのメガトレンドと、サイエンスカンパニーとしての自社の絶対的な強みである技術を掛け合わせた重点領域として筆頭に挙げる農業分野の企業を積極的に買収し、今では売上の約3分の1が農業関連で、最も大きな事業に育てている(2014年時点)。

 もちろん、単に新しいものを「足す」だけでなく、自社にとって優先度が下がったものは「引く」ことを併せて実行しており、メガトレンドを企業行動にまで見事に落とし込んだ例といえよう。

 さらに、メガトレンドは、アドボカシー(政策提言)の実現性を高める。与えられた状況に適応して生き延びるだけではなく、メガトレンドと自社の強みから導き出した事業立地で勝ち続けるために、国や国際機関、業界やNGO/NPOなどに働きかけ、巻き込み、自らのビジネス遂行に有利となるルールを形成することが重要だ。その際には、将来的に世界や自国が置かれる状況に基づき、ルールの必要性と妥当性を訴えなければならないため、提言の起点に考え抜いたメガトレンドを持つことが強いメッセージとなる。

 翻って日本企業では、長期的な経営環境は「事業を取り巻く諸環境」などとIR資料の冒頭を飾るものの、その後に続く戦略や事業計画とのつながりはあまり見えてこない。それは、メガトレンド自体への取り組みの違いだけでなく、企業行動への落とし込みの大前提といえる「自社の強み」が見極められていないことにも起因している。グローバル企業は、過去や現在ではなく、将来に渡って自社の核となり得る強みを明確にしようと絶えず努め、それをメガトレンドに照らすからこそ、重点領域への思い切ったリソースシフトなど、具体的な企業行動に落とし込めるのである。長期動向や自社に対する理解が漠然としているために、機会よりもリスクを先に気にして動き出しが遅れがちな日本企業が最も学ぶべきところかもしれない。