多様な「外の知」を取り込む

 メガトレンドは、社会動向や政治情勢、法規制や諸制度、消費者の生活や感性の変化など、マクロとミクロ、ハードとソフトを横断するあらゆる事象から成る。企業の行く末を決めるメガトレンドを磨き上げ、より確からしいものにするためには、専門分野や国・民族、生活環境など複数軸で多様性ある視点やアイデアを、外から取り入れることが有効である。

 社員のみならず、顧客も参加する15万人規模のオンライン・ディスカッション「イノベーション・ジャム」が有名なIBMは、メガトレンドに関してもこの規模でオープンに知を集める。さらには、数十の国や地域から200人以上のオピニオンリーダーを集め、各大陸で何度もDeep Diveセッションを行うなど、徹底している。

 ユニリーバでは、外部有識者で構成されるユニリーバ・サステナブル・ディベロップメント・グループ(USDG)というアドバイザリーグループを設置している。その陣容は、地球環境保護やサステナビリティ、企業の社会的責任等の専門家で、世界経済フォーラムでも重要な地位にある人物たちで整えられている。USDGと上級幹部が環境・社会・経済問題に関して議論することで、世界レベルの多様な知を取り込んでいるのである。

 また、経営レベルにおいて、特に米系グローバル企業では、ボードメンバー自体の多様性を高めることで、経営に多様な視点を持たせている企業もあり、もちろん、経営陣の共通理解であるメガトレンドにもそれは反映される。

 メガトレンドに限らず、日本企業は知を含む外にあるリソースを活用することがまだまだ不得手で、外部と内部を分けたままの思考に留まり、ダイナミックに融合することができない傾向にある。その素地ともなる社内の同質性も高く(その割に、部門間の壁は高いのだが……)、多様性は乏しいと言わざるを得ない。そのため、このプロセスを意図的に組み込むことが必要なのである。

マネジメントレベルの共通理解を醸成する

 このように磨いたメガトレンドを真に経営の基部に組み込む前提となるのは、企業の全員がこれを自分の思考と行動に取り入れることである。

 その起点となるのは、マネジメントレベルの共通理解である。グローバル企業では、メガトレンドに関する一連の取り組みは、マネジメント層の重要な仕事に位置づけられ、共通の知である。先ほど挙げたユニリーバのUSDGと上級幹部の議論は、経営陣個々人の理解を深めるとともに、共通理解を図る機会となるだろう。

 このほかにも、マネジメント層が集う経営会議の場において、数字の話の前に、自社が読んでいるメガトレンドについて毎回のように議論している企業もある。不確実性の高まったビジネス環境だからこそ、適時適切な判断を逃さないために、常にリーダーたちが企業の方向に関する認識合わせをすることの大切さの現われといえる。

 その上で、タウンホールミーティングなどの機会を作り、マネジメントが自らの声で、自社がメガトレンドとして読み定めたことは何か、なぜそれを重視しているのかを社員に向けて繰り返し伝え続けて、全社的な共通理解の醸成に努めている。

 日本企業における経営会議でも、自社の先行きについての議論はなされているが、比較的足元のトピックが中心であり、長期的な経営環境の変化そのものに関する議論に割かれる時間は多くはないだろう。当然、これではメガトレンドを全社共通の認識とするには不十分であり、現在の目標や業績と同様に、未来も「自分事」として咀嚼しなければならない。