各ステップにおける主な活動を、下の図にまとめた。

 イノベーションは常にインサイトから始まる。つまり潜在ニーズやソリューション、ビジネスモデルに関する気づきである。それらはインスピレーションのひらめきや、課題を示す手がかり、あるいは身の周りに潜んでいるサプライズであったりする。

 ヘルスケア企業の大手、バクスターの営業担当だったゲイリー・クロッカーの例を挙げよう。彼は多忙なスケジュールにありながらも、担当している医療従事者を観察することにできる限りの時間を割いていた。これらの専門家たちをもっとよく理解するため、そしてサプライズを得るためだ。心臓外科医の仕事を手術室で見守っていたクロッカーは、誰が見ても明らかにもかかわらず完全に見過ごされているものに気づいた。大量の血液である。もちろん心臓手術に大量の出血はつきものだが、それは外科医が迅速かつ正確に手術をするうえで大きな問題を引き起こしていたのだ。その後クロッカーは数百万ドル規模の会社を複数設立するが、最初の会社では今や世界中の心臓外科医が使っている「配管」を考案した。手術中の患者の血流を管理するためのものだ。我々の著書では、イノベーターが価値あるサプライズに出会うチャンスを増やすための行動について、観察行為も含めいくつか取り上げている。

 大半のイノベーターはひとたびインサイトを得ると、本当の問題(果たすべき課題)を理解しないまま、ただちにソリューションの開発に進むというミスを犯す。たとえば、ソフトウェアメーカー各社にとって、テクニカル・サポート部門(顧客に対応するヘルプデスク)の運営は大きな課題だった。そしてサポート市場に参入してくる企業の大多数は、「サポート担当者向けのナレッジデータベースを構築することが解決策」だと考えた。

 ところが、この市場への参入を計画中だったマイク・メイプルズ・ジュニアと彼のチームは、このアプローチを取らなかった。まずは数週間かけてサポート担当者を観察し、彼らの通話時間を計測し、その会話に耳を傾け、サポートのプロセスを明らかにした。そして、担当者がナレッジデータベースを利用して実際に問題に対処したのは通話全体のわずか25%にすぎないことを突き止めた。残り75%の通話は事務的で単純な事項、たとえば使用OSの確認や、必要なサポートレベルの確認などに費やされていたのだ。競合各社がいずれも見逃していたこの問題を深く理解したメイプルズのチームは、その後数百万ドルを売り上げる製品を開発した。

 解決したい問題が判明したら、そのソリューションに最速でたどり着く方法を見出す必要がある。プロトタイプの価値は誰もが理解しているし、「実用最小限の製品」(Minimum Viable Product)という概念もよく知られている。我々の調査によれば、イノベーターはリスクを軽減して素早くソリューションを検証すべく、4種類のプロトタイプを次の順番通りに活用している。①理論的プロトタイプ(つまり口頭での説明)、②仮想プロトタイプ(またはプレトタイプ。視覚的にのみ再現)、③実用最小限の製品、そして④最小限の素晴らしい製品(Minimum Awesome Product:顧客の興味を引くいくつかの機能について、高い評価を得ることを目指して作り込む)である。