組織デザインで求められる
六要素への包括的な取り組み

 六つの要素は密接に関係しており、一部だけを見直しても大きな成果は望めない。六角形の図がそれぞれ直線でつながっているのは、そのような意味である。先の営業マネジャーの例で考えてみよう。

 企業が売上成績と営業チーム力の向上を望むのであれば、営業メンバーに対するトレーニングなどの支援は欠かせない。各メンバーが対面する顧客に集中するため、コールセンターの守備範囲を拡大するなど、業務の見直しが必要になるかもしれない。また、情報システムで適切なKPIを設定して可視化する必要がある。そして、成果を上げたマネジャーには、それにふさわしい報酬が用意されるべきだ。

 私自身がかつて経験したケースがある。1980年代、私はP&Gのある工場に赴任した。パンパースなど紙製品の製造拠点である。その工場はコスト的な競争力には優れていたのだが、不良品の発生率が高いという課題があった。そこで、TQC(Total Quality Control)への取り組みを始めたのだが、なかなか成果が見えてこない。私たちは工場での働き方を観察して、いくつかのことを発見した。

 まず、意思決定について。当時は製造ラインで問題が発生するたびに、チームマネジャーの判断が求めていた。夜にトラブルが起きれば、自宅にいるチームマネジャーに電話をかけて、「ラインを止めてもいいですか」と聞く。ラインの状態を最もよくわかっているはずの現場で、意思決定ができなかったのである。

 情報システムに関係する問題もあった。コストや効率を示すKPIはあったのだが、クオリティについてのKPIがなかったのである。このような状態を放置したままで、ラインを動かすチームにクオリティ向上を求めることには無理がある。

 業務の視点では、クオリティを高めるための業務が明示されていなかった。報酬制度にも、製造物のクオリティは反映されていなかった。

 これらのすべてを見直すことで、工場の品質問題は解消に向かった。組織デザインのすべての要素に働きかける包括的な取り組みによって、組織の文化や行動が変わっていった。これが行動科学に基づく組織変革のアプローチである。

 注意すべきポイントは、組織デザインに先立って戦略があるということだ。「勝利の定義」を明確にした上で、「どこで戦うか」「いかに戦うか」が決まれば、「勝つためにどのような能力が必要か」が見えてくる。

 勝つ能力を備えた組織をつくる、それがここでいう組織デザインである。そして、組織デザインを見直すことで、企業文化や組織行動が変革される。それがビジネスに成果をもたらす。健全な文化、望ましい行動を促進する組織づくりは終わりのない取り組みだが、ある程度軌道に乗れば、企業の持続的な成長の大きな力になるはずだ。