教訓④:組織全体で倹約的な行動を奨励・持続させるために、重要業績評価指標(KPI)を設ける

 倹約的な思考と行動をあらゆるレベルの従業員に浸透させるには、そのためのKPIを設けなければならない。これらの指標は、従業員が全社的な目標に対する自身のパフォーマンスを確認し、個人と組織の取り組みが乖離しないよう調整できるようにするためのものだ。

 英大手教育サービス会社ピアソンのCEOジョン・ファロンは、自社の核となる方針を「学習者に成果をもたらす」ことへと変えた(これによって、最大のインパクトがあるものだけを迅速に提供することが必然となり、フルーガル・イノベーションが実現されている)。この方針は、採用、研修、業績管理、インセンティブ制度にも適用されている。ピアソンのすべての経営幹部は、学習成果に沿ったKPIを測定され、その結果と自社の業績に応じた報酬を受ける。

 フランスの食品グループのダノンは、ソフトウェアプロバイダのSAPと共同開発した「ダンプリント」という測定ツールを導入。ダノンの全子会社における製品ライフサイクル全体の、カーボン・フットプリント(CO2排出状況)を追跡調査している。ダンプリントは経営幹部らに資源の効率化を促す。そしてフランク・リブー会長が掲げた「2020年までにカーボン・フットプリントを50%以上削減」という目標の達成、そして売上成長を維持しながらのCO2排出量の安定化を図るために活用されている。

教訓⑤:「より少ないもので、より巧くやる」という信念を広く徹底的に伝える

 企業は大胆なフルーガル・イノベーションの目標を、プレスリリースで伝えるだけではいけない。企業のリーダーは自身の評判を懸けて、その目標を大々的に公表すると共に、従業員、顧客、投資家やパートナーに説き続けなければならない。

 ユニリーバのCEOポール・ポールマンは、2010年にユニリーバ・サステナブル・リビング・プランを立ち上げ、世間と会社に公約を示した。2020年までに環境への負荷を半減させながら、収益を2倍にするという大胆な目標だ。2010年以来、ポールマンは世界中を飛び回り、ユニリーバの主要地域で従業員と話し合いを幾度となく重ね、数多くの公式のスピーチやメディアのインタビューを通して、自身のビジョンを伝えてきた。

 ピアソンでは、主席教育顧問のサー・マイケル・バーバーが、「エフィカシー」(測定可能な学習成果を示すこと)を中核目標とするフルーガル・イノベーション戦略を粘り強く実行してきた。バーバーは世界各地を訪れ、大規模な国際フォーラムで講演し、主要な出版物に寄稿しながら、社内外のステークホルダーにエフィカシーの重要性を説いている。

 フルーガル・イノベーションの文化を築くには、組織全体の秩序立った変革が求められる。その変化を起こすために、CEOは先頭に立たねばならない。


HBR.ORG原文:What Frugal Innovators Do December 10, 2014

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ナヴィ・ラジュ(Navi Radjou)
シリコンバレーを拠点とする、イノベーションとリーダーシップのアドバイザー。TEDのスピーカー。2013年にThinkers50主催のイノベーション賞を受賞。著書に『イノベーションは新興国に学べ!』(ジャイディープ・プラブ、シモーヌ・アフージャとの共著、日本経済新聞出版社)、新刊にFrugal Innovation(ジャイディープ・プラブとの共著)がある。

ジャイディープ・プラブ(Jaideep Prabhu)
ジャワハルラール・ネルー大学教授。インドのビジネスおよび企業を担当。ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクールでインド&グローバル・ビジネス・センターのディレクターも務める。著書に『イノベーションは新興国に学べ!』(ナヴィ・ラジュ、シモーヌ・アフージャとの共著、日本経済新聞出版社)、新刊にFrugal Innovation(ナヴィ・ラジュとの共著)がある。