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平井孝志(ひらい・たかし)
早稲田大学ビジネススクール客員教授。東京大学教養学部基礎科学科第一卒。東京大学大学院理学系研究科相関理化学修士課程修了。ベイン・アンド・カンパニー、デル及びスターバックスなど複数の事業会社を経て、ローランド・ベルガーに参画。米国マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院MBA。博士(学術)早稲田大学。現ローランド・ベルガー 執行役員シニアパートナー。専門分野は総合経営、経営戦略論、グローバルマーケティング、ビジネスモデル。主な著書に『本質思考』(東洋経済新報社)などがある。

②顧客における使い勝手の変化

 これは、現在主流となっている顧客価値の提供方法の変化、あるいは顧客における価値の捉え方の変化に敏感になるというものである。真っ先に思い出すのがクリステンセンの破壊的イノベーションだろう(注2)。破壊的イノベーションは、技術そのものというより、大幅な小型化や画期的な低価格化など、顧客視点での使い勝手の革新をもたらすものであり、メインユーザーではなく一部のユーザーに受け入れられるような新たな製品・サービスである。同じような価値がまったく違う形で満たされている事例などが見つかった場合は要注意である。

 あるいは、新しい戦い方、ビジネスモデルの登場である。たとえば、ウォルマートはその好事例だろう。今でこそウォルマートは巨大企業だが、創業当時はKマートなどの大きな競争相手に立ち向かう小さなチャレンジャーだった。ウォルマートは当初、商圏が小さ過ぎてディスカウントストアの出店は無理だと思われる小さな町に出店していった。一店舗毎での戦いをやめて、複数の店舗をネットワーク化し、それを一つの店舗と見なした戦い方を仕掛けていったのである。これを支えたのは複数店舗を纏め上げる情報システムとロジスティクスだった。Kマートも同じような情報システムを持っていたが、各店舗毎の商品展開、仕入れ、値決めといった過去のやり方を変えることはなく、凋落していった。

 自分達の戦い方と違う、新たなビジネスモデルを引っさげて成長している企業にはよくよく注目すべきだと言える。

③根源的ドライバーの変化

 3つ目のヒントは、根源的なドライバーの変化に着目することである。たとえば、人口構成の推移や、都市化の進展、様々なモノのネットワーク化、規制緩和など、事業環境に影響を与えるマクロ要因は、着実に、また、ある程度の予測精度を持って変化していく。事前に打ち手を講じようとするのであれば、それらの動きを理解し、歩調を合わせていくことが望ましい。

 たとえば、どのような業界に属していても、高齢化の波は時間とともに着実にやってくる。65歳定年時代、さらには70歳定年時代もおそらくやってくるだろう。企業として、そのためにどのようなビジネスモデルへの変革を成し遂げるべきかは、今から考えておかなければならない課題となる。