ビジネスモデルの時間的要素

 ある日系大手企業の経営陣と話しをしていた時に、次のような質問を受けた。「当社は、組織が官僚的で内向きだ。トップも常に顧客志向に舵を切ろうと言っているものの、なかなかそうならない。何かいい方法はないだろうか?」という質問である。残念ながら即効薬はない。それは、これまで議論してきたようなビジネスモデルの本質を考えると容易に想像できるであろう。お手軽な方法は、対症療法にしか過ぎない。

 まず、顧客起点のシンプルで整合性のあるビジネスモデルが存在する必要がある。もしこれがないようであれば、この構築から取り掛からねばならない。そのビジネスモデルは、デルやスターバックスの例を振り返ってもらえればわかるように、戦略的要素やプロセス、資源や活動などいくつかの要素が混在しており、システムを形成している。このシステムを作り上げるには、時間と努力が必要だ。

 もしその構造があったとしても、その次に、このビジネスモデルを廻すためのコンテキストの醸成と浸透が必要となる。そのためには、大小取り合わせた多面的なビジネスモデル・マネジメントが必要となる。ストックオプション、コーヒーティスティング、見える化、給与体系・・・。いろんな有効な打ち手がボディーブローのように効いてきて、そして、相乗効果を生み出してきてはじめてビジネスモデルが強化されていく。ちょうど、動き出した電車が、その重さ(慣性)に打ち勝ち、徐々に速度を上げていくようなダイナミズムが必要なのである。ダイナミズムという言葉には、そもそも時間という概念が含まれている。組織にも慣性がある以上、一瞬ですべてが変わることはない。やはりある一定の時間と継続的な努力が必要なのである。

 ビジネスモデルには、モデル(構造)と、その構造の上で動く、あるいはその構造自体を強化していくダイナミズム(時間発展)の二つが存在し、その両方があってはじめて「強い」ビジネスモデルが実現すると考えることができる。このダイナミズムの管理、つまり、ビジネスモデルの時間軸に沿った発展・強化こそ、ビジネスモデル・マネジメントなのである。

 デルとスターバックスは、この二つの観点双方において成功してきた企業だと言えるだろう。

 「強い」ビジネスモデルを築いても、必ずその限界は訪れる。次回はビジネスモデルをいかに変革していくかについて考えよう。

(注1)伊丹敬之『経営戦略の論理(第3版)』(日本経済新聞社)

(注2)根来龍之『事業創造のロジック』(日経BP社)