スターバックスは、自分達のビジネスをピープル・ビジネスと呼んでいる。人の魅力は、サード・プレイスに最後の魂を吹き込むものなのである。

ビジネスモデルを機能させる「コンテキスト」の力

 スターバックスのビジネスモデルを、デルと同じようなモデルで示すと図表「スターバックス・ピープル・ビジネス・モデル」のように表せるだろう。スターバックスは、人の自主性をうまく引き出し、それを顧客価値にどう変換するかに徹底的にこだわっている。スターバックスのビジネスモデルを支えているものは、ピープル(人)なのである。

 

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スターバックス・ピープル・ビジネス・モデル

 デルのビジネスモデルに埋め込まれていたものは、「測定」と「スピード」であった。スターバックスの場合は、それがピープル(人)を大切にする組織風土だと言えるだろう。このピープル・ビジネスや、測定とスピードは、ビジネスモデルを廻す前提であり、組織全体が共有すべき共通認識である。これはコンテキストと呼ぶことができる。コンテキストとは「人間の認知、決定、行動の当事者にとっての適切性を支える前提」である(注2)。つまり、ビジネスモデルが組織の中で機能するためには、コンテキストが必要で、ビジネスモデルのマネジメントは、まさにこのコンテキストを強化するベクトルに沿ったものでなくてならない。

 今一度、デルとスターバックスの事例に戻ると、このコンテキスト強化のマネジメントの違いが、重要な会議の始め方ひとつにも現れている。私が在籍していた頃のデルでは、月次の重要なオペレーション・レビューのミーティングの際には、まずCFOが出てきて、その年のボーナスに直結するカスタマー・エクスペリエンスの指標の確認と、その達成状況、そして想定されるボーナス額の試算を示すことから始まった。一方、スターバックスのオペレーション・レビューのミーティングは、みんなの持ち回りで、コーヒーのテイスティングを行うことから始まった。これは、どちらが良いか悪いかではなく、それぞれのビジネスモデルのコンテキストに適合したやり方か否かがポイントなのである。