あるいは90年代後半から、営業部門別の売上、粗利、製品構成などがメールでグローバル・マネジメントに共有されていた。もし、前日のビジネスの状況について、なぜ売上が上がったのか・下がったのか、なぜ利益率が良かったのか・悪かったのか、こういうことの説明ができなければ、デルのマネジメントとしては失格だった。

 このように、デルのダイレクト・モデルの中には、徹底的な「測定」と「スピード」が埋め込まれていたのである。ダイレクト・モデルを廻すための仕組みが作られ、それが社員の報酬にも直結し、結果として、顧客価値が増大するというビジネスモデル・マネジメントのサイクルが廻っていたのである。

スターバックスのピープル・ビジネスモデル

 ここからはスターバックスのビジネスモデルを取り上げる。スターバックスは、エスプレッソドリンクの新しい楽しみ方の提案をおこない、大きく成長を遂げてきた。スターバックスは、現在日本で約1000店舗、グローバルで約21000店舗のコーヒーショップを展開している。

 ビジネスモデルの特徴として最初に挙げられるのは、くつろげる「空間」の提供である。スターバックスはそれを「サード・プレイス(第三の場所)」と呼んでいる。家庭でもなく、職場や学校でもない、自分を取り戻せる第三の場所がサード・プレイスである。その土台である店舗をしっかりとコントロールするため、店舗は基本、直営店である。

 二つ目は、最高級のコーヒーの提供だ。一杯50セントではなく少々高いけど、香り豊かでおいしいコーヒー。これは手の届く贅沢であり、スターバックスブランドの根幹である。コーヒー豆の品質を担保するため、その調達から焙煎、配送手段、最終的なドリンクの提供まで、すべてを垂直統合して自前で行っている。コーヒー豆の生産国や農家は一般的に貧しいが、スターバックスはその国や農家に対する支援まで行っている。その活動は、スターバックスの社会貢献の側面を持つと同時に、コーヒー豆の品質維持と安定調達にも役立っているのである。

 三つ目は、従業員(パートナーと呼称)を大切にしていることである。米国においても、早くからアルバイトに対して健康保険を適用し、ストックオプションまで付与している。従業員はまさにいっしょに顧客へ価値を提供するパートナーなのである。また、スターバックスには接客に関するマニュアルは存在しない。その一方で、「Just Say Yes」といった考え方があり、パートナー一人ひとりがお仕着せではなく、顧客にNoと言わない自分なりの接客をすることが推奨されている。「Just Say Yes」の精神が、人の「魅力」を最大限に引き出すことにつながると考えているからである。