シンプルなビジネスモデルが、模倣されない理由

 「強い」ビジネスモデルは、デルのケースで考えると、シンプルで適合性、別の表現をすると整合性の取れたものでなければならないことがわかる。ただそうすると、ここで一つの疑問が生まれてくる。シンプルで整合性のある論理に基づくビジネスモデルならば、真似され易く、持続的な競争優位の源泉にはなりえないのではないかという点である。ルメルトの言う隔離メカニズムや、バーニーの言う模倣困難性(VRIOのI)がなければ企業はいずれ競争優位を失ってしまう。しかし、現時点では苦戦はしているものの、デルは数十年間にわたって世界的PCメーカーとして存在し続けている。

 真似されない理由としては、いくつかの可能性が考えられる。たとえば、全体としては合理的だが、部分的には非合理が存在しているため他社は真似できないという論理である。デルの場合、収益性が低いといわれる組立工程に特化し、自社工場によってPCを作るという部分的な非合理が組み合わさることで、先ほどのような全体の合理性を生んでいるから、他者は真似しにくいという鋭い論理である(注3)。

 ただ一方、先ほどのオーダーステータスの例を取り上げると、違う観点での隔離メカニズムも見えてくる。オーダーステータスのような取り組みは、すべてマイケル・デルが考えるものではなく、現場あるいは組織内部での議論から生まれてきたものである。この点に着目すると、ビジネスモデルをどう廻し、現場での創発をどう生み出すかといったビジネスモデル・マネジメントによる隔離メカニズムの可能性も見えてくる。つまり、ビジネスモデルにオペレーションレベルでの強みが加わって、一体となってはじめて、真似されない「強い」ビジネスモデルが出来上がっていくという解釈の可能性である(注4)。

 次回はビジネスモデルをどのように組織へ浸透させていくのか考えよう。

(注1)平井孝志『組織力を高める』(東洋経済新報社)

(注2)マイケル・E・ポーター「戦略の本質」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2001年5月

(注3)楠木建『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)

(注4)経営研究所「ビジネスモデル研究会」(共同主査:山田英夫・平井孝志・内野崇)の議論を参照