優位性を築くために不可欠なシンプルさと適合性

 これらビジネスモデルの特徴を、全体のつながりを意識しながらモデルで捉えると、図表「デル・ダイレクト・モデル」のような形になる。お互いの要素は相互につながっており、それらが廻っていくことによって、好循環が生まれてくることが理解できる。

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図表 デル・ダイレクト・モデル

 マイケル・ポーターは、ハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した「戦略の本質」の中で、「競争優位は各活動での適合性から生じる」と述べている(注2)。つまり、戦略ポジションに基づく一貫した業務活動が企業に競争優位をもたらし、その業務活動がうまく適合されていなければならないと主張しているのである。適合性には3つある。それらは、①ある活動(あるいは機能)と戦略全体の間における「単純明快な一貫性」、②「各活動が相互に補強する」、③活動間の相互補強を越える「労力の最適化」の3つである。

 デルのダイレクト・モデルも、図表を見てもらえればわかるように、非常にシンプルで、それぞれの要素がお互いに連関しているのがわかる。デルのビジネスモデルは、ポーターのいう適合性の3つの要素を満たしていると言えるだろう。

 ①②は、わかりやすいと思うので、③について少し説明しよう。③の労力の最適化は、業務活動間の調整や情報共有によって余分な活動を取り払い、無駄を極力減らすことを意味している。たとえば、製品設計のあり方を変えることで、アフターサービスのコストを下げるといった活動である。

 デルのケースで言うと、オーダーステータスという仕組みがその例の一つと言えるだろう。デルは、インターネットの黎明期にあって、顧客が注文したPCが工場で生産中なのか、飛行機で輸送中なのか、国内に到着済みなのか、そしていつ届くのかがネット上でわかる仕組みを導入していた。これは、工場、物流パートナー、本社がITで繋がることによって実現できた仕組みである。これには二つの意味がある。一つには、これまで顧客からの納期などの問い合わせに答えるためにデルが行っていたシステム上の確認作業を顧客自身が行ってくれて、デルのコストが下がること。二つめは、24時間、思い立ったときに注文したPCの状況を確認できるので顧客の利便性が増したことである。ITの仕組みによる企業間連携によって、デル内での「労力の最適化」が起こると同時に、顧客価値の向上を実現したのである。