第二に、ダイレクト・モデルは完成品在庫を持たないビジネスモデルであり、サプライチェーン・マネジメント(SCM)のコストを低減する余地が大きかった点である。実際デルは、90年代後半には在庫レベルが7日間、現在では3日間程度の在庫レベルを達成している。数兆円のビジネスを食料品スーパー並みの在庫レベルで廻しているのである。当然のことながら、在庫管理費用や不良在庫の引当金などのコストが下がることになる。

 第三に、PCビジネスの主要なコストの一つであるアフターサービスのコストが下がるメカニズムが働くことだ。なぜなら、直販ゆえに品質が良くなるからである。工場で作った製品がそのまま顧客へ届けられるので、横持ち物流などもなく、物流段階でのダメージも少ない。その分、初期不良率が小さくなり、アフターサービスに関するコストが減少するという論理が成り立つのである。もっと言うと、そもそものメイン顧客が企業なので、一般の人に比べPCリテラシーも高く、アフターサービスの必要性も小さかったのである。

 第四に、製造原価も安くなる。それは、部品の値段が時間とともに下がっていくからである。PC部品の値段は1年に約50%下がる。デルの在庫が3日間である場合、端的に表現すると、デルは3日前に部品を調達していることになる。これは、たとえば一ヶ月の在庫を持つ競合他社が一ヶ月前に部品を調達した場合と比べると、同じ部品でも安く調達できることを意味している。

 第五に、在庫レベルが低いことによって、新しい製品に早く移行することができる。デルは、既存製品の在庫がはけるのを長い間待つ必要もなく、また、値下げして在庫を売り切る必要もなく、新製品に移行できる。この早い新製品への移行は、マイクロソフトやインテルにとっても大きなメリットとなる。なぜなら、彼らは新しい技術を世の中に送り出し、高価格で市場参入をはかって利益を上げるスキミング・プライシングで儲けているからだ。おのずとデルとの協業が進むことになる。

 最後に、もっとも大切なポイントとしては、直販であるがゆえに顧客との距離が短いことがあげられる。誰が、どんな製品を、何台使っているか、そして、どのようなサービス履歴があるかなどがわかっているので、買い替え提案やサービス提供などをより的確に行えるのである(注1)。