このように「強い」ということの定義に考えを巡らせると、ビジネスモデルについて議論するうえでは、ステージ論が必要となることに気づく。ビジネスモデルのステージは、前半、中盤、後半の大きく3つに分けられるだろう。前半は、ビジネスモデルを創造するステージ、中盤は、ビジネスモデルを廻しながら完成度を高めていくステージ、後半は、環境変化などを引き金に、ビジネスモデルを変革していくステージということができる。本連載では、ビジネスモデルの中盤から後半のステージに焦点を当てる。その背景には、ビジネスモデルを創造する難しさと同じくらい、あるいはそれ以上に、ビジネスモデルを廻し、変革していくことは難しいことであり、重要なことだと考えるからである。

 私はかつて、デルやスターバックスの日本法人のマーケティングや経営企画の責任者として勤務した経験がある。デルもスターバックスも、ユニークなビジネスモデルで成長を果たしてきた企業だ。まったく異なる業界に属する2社だが、ビジネスモデルというレンズを通してみると共通点や示唆も多い。経験者目線を加え、成長期以降(中盤以降)におけるそれぞれのビジネスモデルの特徴と実践について紹介しよう。

デル・ダイレクト・モデル

 まずデルコンピュータである。ご存知のように、デルは一言で言えば、30年程前に創業したPCの直販メーカーだ。その後大きく成長し、一時は世界No1のPCメーカーとなった。デルは直販なのでカスタムメイドしたPCを顧客に届けることができる。しかも流通マージンがない分、安くなる。使用している部品は、基本、デファクトスタンダード(事実上の標準)のものである。このような直販モデルが、デル・ダイレクト・モデルと呼ばれている。では、ダイレクト・モデルはどのような特徴を持つビジネスモデルなのだろうか。

 第一に、ダイレクト・モデルでは、営業やマーケティングにおいて大きな優位性が生まれる。それは、明確な顧客ターゲティングをおのずと行えたところにある。PC市場の導入期・成長期にあって、PCを直接買うことのできる人は限られていた。普通の人は、「CPUは何にしますか」と聞かれても困る。それゆえデルのメイン顧客は企業であった。彼らは価格と性能という明確な購買動機を持つ合理的な顧客であり、販売店を通さずに直接注文する能力を持っていたのである。そして、そのセグメントは直販の強みが活き、かつ今後規模拡大が見込まれるセグメントであった。