さて、企業と消費者のコラボレーションを推進する我々コミュニスペースは、あることを考えた。消費者の嗜好を測る諸々のツール――アンケート調査やMaxDiff法(選択肢から最善のものと最悪のものを選ばせる手法)等々――には欠陥が多い(そして率直に言えば、つまらない)。そこで、予測市場がそれらに代わる有効な方法にならないだろうか。消費者も企業の従業員と同じように、予測市場によって関与を強め、正確な結果を示すのではないだろうか――。

 複数の研究、および当社が50の予測市場を運営してきた経験は、まさにそれが正しいことを示している(英語論文)。我々はクライアント企業と5回の実験を行った。予測市場とその他の調査法(大規模サンプルを対象とした従来型のアンケート調査、もしくはMaxDiff法)を並行で実施したところ、両方ともほぼ同じ結果であった。ただし予測市場のほうが回答者数は少なかったが、従来の調査法よりも消費者の意識や感情の細かい部分をはるかに明確に示す。投資の多寡が顕著に表れるので、好みの偏り具合が一目でわかるのだ。また、投資した人の数と金額の平均を見ることで、どの選択肢が最も熱心に支持されているかがわかる。

 しかし肝心なのは、消費者の予測と現実世界での結果が一致するかどうかだ。そしてこの点でも有効だった。一例としてある大手健康美容製品メーカーは、消費者と共同開発した3つの製品コンセプトを既存の基幹製品と比較検証するために、予測市場を活用した。すると、3つのうちの1つが圧倒的に有望だという市場結果が出たので、他の大規模な定量調査を省略してその製品コンセプトでの発売に踏み切った。そして現在までの売上げは予想を上回っている。

 他の例として、ギフトを取り扱う某メディア企業と我々は、クリスマス商戦に向けた5つの製品を2つの予想市場(一方は従業員、もう一方は消費者)にかけた。これらの製品は、すでに従来型の定量調査では製造と販売に値する良好な結果が出ていた。予測市場に提示された問いは、「今年の新モデルが前年のモデルより売れるかどうか」。発売後に予測の結果を実際の売上げデータと照合したところ、消費者の予測市場では5つのうち3つの製品が正しく予測され、従業員の市場では5つとも正しく予測されていた。

 予測市場の効果について見逃されがちな点は、事業内容や製品・サービスに対して顧客の本物の興味や熱意を喚起できるということだ。そして予測市場は製品コンセプトの検証にとどまらず、様々な目的に利用できる。たとえば新製品の開発における選択肢の絞り込み、機能の優先順位づけ、マーケティング施策の諸要素のテストなどだ。ただし選択肢の成否を予測してもらうのは、顧客との絆を強める1つの手段にすぎない。理想的には、予測市場に寄せられた顧客の声と情熱を事業のすみずみまで届かせること、製品・サービスのライフサイクルの全段階に活かすことだ。先見の明を持つ企業は新たな市場調査の方法を模索するだけにとどまらない。製品・サービスのデザインとテストにおいて、買い手となってほしい人々の情熱と知識を取り込もうと努めるのだ。それができれば、事業は顧客に触発されながら発展していくはずだ――この予測は、おそらく間違いない。


HBR.ORG原文:Ask Your Customers for Predictions, Not Preferences January 5, 2015

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ジュリー・ウィッツ・シュラック(Julie Wittes Schlack)
コミュニスペースの創設メンバーでイノベーション担当バイスプレジデント。消費者を企業のパートナーとして引き込む新たな技術と方法に取り組んでいる。