筆者はGEソフトウェアの社員数人と話したが、誰もが情熱に満ちあふれていた。GEが持つ産業分野の知識と、自分たちのスタートアップらしいスピードとイノベーションを組み合わせて変化を起こそうという熱意だ。リクルーターは候補者にアピールするために、GEならではの価値提案を示した。たとえばリーダーシップ開発に関する高い評判や、今後の一大潮流となるインダストリアル・インターネットの魅力的なビジョン、ヘルスケアやエネルギーなどの分野でやりがいのある仕事に携われるチャンスなどだ。

●“母艦”との統合
 当然とも思われる別の課題があった。ソフトウェアセンターのソリューションを、GEの既存事業(アビエーションやヘルスケア、パワー&ウォーター、トランスポーテーション等々)に導入する際の混乱の可能性だ。社内スタートアップと既存事業は、どうすればうまくやっていけるのか。それを知るために、GEパワー&ウォーターのソフトウェア&アナリティクス部門で最高デジタル責任者とゼネラルマネジャーを兼務する、ガネシュ・ベルに話を聞いた。彼はソフトウェアセンターと同社屈指の大規模事業部の交わる接点にいる人物だ。

「最初にやったのは、ポジショニングを明確にすることです。顧客とのより多様なパートナーシップによって、マーケット主導で大きな成果を生むという、GE全体で共有できるビジョンを打ち出しました。また、将来の方向性を明確に示しました。つまりインダストリアル・インターネットの推進です。ソフトウェアだけについて説明しても受け入れられなかったでしょうが、これははるかに大きな、顧客主導の戦略です。

 第2に、新たなソフトウェア人材を育成し、自社にソフトウェアのDNAを醸成しています。GEソフトウェアは独自の(CEO直轄の)資金で運営され、各事業部の中でソフトウェアのソリューションから上がる利益は別途確認できるようになっています。GEソフトウェアと各事業部の業績指標は、新たな利益創出という点で連動しているのです。第3に、以前からGE全体で、イノベーションを迅速に進める“ファストワークス”に取り組んできたことも大きいでしょう」

 成果は上がっている。一例としてGEの部門横断型チームは、〈パワーアップ〉というデータ解析ソフトウェアを駆使してエネルギー大手のエーオンを含む顧客と協働し、風力タービンの発電能力を高めている(エーオンの場合は4%向上)。

 このようなビジョンや潜在能力はあったものの、取り組みの過程では他にも困難が伴ったという。ソフトウェア開発者の多くがクラウドの信頼性と安全性を懸念し、中には一部の機能をクラウドに移すのを拒む者も出てきた。また、GEが機敏なプログラミング手法(アジャイル開発やエクストリーム・プログラミング)を取り入れて、開発期間を大幅に短縮して生産性を上げるには、従来とは異なる新しいスキルセットが必要とされた。しかし、古い技術から新しい技術へと社員を移行させるのは容易ではなかった。