「一大決心」なしで「前例のない」ことをやるには

 日本企業はイノベーションが起こせない、と言われます。改善は得意でも、リスクを取ってまったく新しい施策をなかなか打てません。挑戦したことへの評価より失敗した際のマイナス評価が大きいからなど、さまざまその要因が言われます。

 しかし、リスクを下げたいのは誰もが同じで、よりリスクの少ない「試み方」があれば、その方が「賢いやり方」であることは間違いありません。

 新しいことへの挑戦をいかにリスクの小さなやり方で「賢く」やるか。さらに言えば、何度も挑戦できる仕組みをつくる。それによって、答えのない問いに「試してみる」という対応をできる可能性が大きく広がります。

 弊誌ハーバード・ビジネス・レビューの最新号の特集はこれをテーマにしました。特集タイトルは「小さなイノベーション」としました。イノベーションに大きい、小さいはあるのかと自問しましたが、「前例のないこと」「答えのないこと」を切り拓くことをすべて「イノベーション」と定義し、身の丈で実施できる「やり方」と「考え方」を提案しました。サブタイトルは「より速く、より安く、より巧く」。速さはトライアル・アンド・エラーの回数を増やすことにつながり、安さは失敗コストを下げることができます。そして大上段に構えるのではなく、日常の業務の中にそれらの仕組みを組み込むことができれば、それは「巧い」やり方として定着します。

 イノベーションの実現というと、どうしても一大決心が必要になります。退路を断って困難な課題に挑む、あるいは前人未到の大きなビジョンを掲げて邁進する。これらは大きな意思決定が必要となります。このような形ではなく、すぐにでも、小さな取組でも始められることはやってみよう、こんな提案をしました。

 特集では、他社と組むオープン・イノベーションや、検証結果を高速で回すビジネス実験のやり方など、実践的な取り組みを紹介しました。いまの業務を少し改善するくらいの気持ちで取り組んでもらえたらと思っています。(編集長・岩佐文夫)