糸井事務所は4か月に一度、席替えをしています

篠田:それまではマイナスの循環を皆で一所懸命グルグル回していた……。

枝廣:そうそう。企業の部門ってどうしても営業と製造とか、敵対関係にある場合が多いんですよ。それは構造がそうなっているからです。お互いに責め合うんじゃなく、自分たちの数字や効率を上げるためにやっている取り組みが他部門にどういう影響を与えているのかということを皆で考えることが大切なんです。それによって少なくとも、各部門の個別最適によって会社全体が疲弊するようなことはなくなります。

篠田:すごくよくわかります。糸井事務所はその点を意識した組織運営をしていいます。まだ70名程度の小さい組織だからできることかもしれませんが、一応主担当業務はありつつ、実際の仕事は個々のプロジェクト単位で動いているんです。手帳をつくるチームとか、あるコンテンツをつくるときに結成したチームとかですね。そこにはデザイナーや文章を書く人、企画する人など、様々な機能が集まっています。そんな最小単位が社内にたくさんあって、それによって自分とは違う仕事をしている人への共感が生まれやすいのです。

 席替えも4か月に一度ありまして、クジで全とっかえします。あるときは私の隣の席に商品企画の人がいて、あるときは品質管理の人がいる。それによって他の職種の人の仕事や姿勢をある程度、個人のなかに感覚的なものも含めた経験値として蓄積できるようになっているのです。経営陣だけで全社を統合するというのはものすごい負担なんですね。それを多少でも分散処理して回っている仕組みです。

枝廣:それってすごく強い組織ですね。小さな単位のフラクタル構造になっていて、それが緩やかにつながっているって感じですよね。

篠田:そうですね、たしかに自己増殖します。企画は自然発生的に生まれますから、どこで誰がどういう動機をもつかはコントロールできません。いまどういう企画が動いているかを一覧表にできる人は誰もいない。でも最後は、ほぼ日という場所にアウトプットとして集積しますし、ウェブ上で、BtoCでやっているので、お客様の反応がリアルタイムで全員にわかりますからそこで統合はされているんです。

枝廣:出口が統合されているのと、お客様の反応が大きなフィードバックになっている。きっとそこが全員に共通しているから統合できているのでしょう。普通、統合っていうとかっちりとしたイメージをもってしまうんですけど、もっと緩やかなつながりでアメーバーのように動いているわけですね。

篠田:このようなループでうちの組織はうまく回っているなとか、仮にうまく回らなくなったとしたら、ここが強くなり過ぎているからだ、などといった組織のありようなども、もっと理解したくなりました。

枝廣:それも描けますよ。いまのお話は組織論として面白いですね。どういう要素を出してどうつないでいくか。同じような商品・サービスを提供していても、一般の会社と糸井事務所では、働く人たちのモチベーションややりがい、フィードバック、成長のループはきっと違うかたちなんでしょうね。