――それほど短期間で広まるのはなぜですか。

 すべての条件が整っているからです。消費者には新たな技術を受け容れる素地ができています。アップルのiPodは発売から2年間で100万台売れましたが、iPadになると最初の2年間で8000万台が売れたのですから。新技術の普及における障壁は、私が博士課程以前から情熱を注いできた研究テーマです。そしていまでは、そのような障壁が急速に崩れつつあり、研究すべきことはあまりないとも感じています。

 また別の要因として、技術そのものが以前よりも急速に進化しています。ネットとの接続はどこででも可能で、バッテリーの性能は素晴らしく、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)は強力かつ安価となりました。ホロレンズ専用にマイクロソフトが開発した基本技術、ホログラフィック・プロセッシング・ユニット(HPU)も、以前よりも強力なものを低コストかつ短期間でつくれるようになるかもしれません。つまりテクノロジーの世界では、1つの分野だけでなくすべての分野で、デジタル化による破壊的変化が進んでいるのです。マイクロソフトがやってきたように、これらのイノベーションすべてを1つの分野に適用し、ブームになれば、新技術は5年で行きわたるでしょう。

――これまで似たような製品の多くが失敗してきたことを考えると、私は企業幹部として「ホロレンズこそが次なるブームだ」と宣言するのは怖いのですが。

 だからこそ、企業は常に乗り遅れるのです。かつて企業幹部たちはソーシャルメディアの活用に臆病でしたし、いまだにモバイル化の波についていこうとあがいています。こう考えてみてください。ホロレンズを紹介するYouTube動画は1200万回以上も視聴されています。視聴者の多くは、企業幹部より下位にいる人たち、そして顧客にあたる人たちです。これに対し、幹部や取締役はどうでしょうか。自分のiPadを誇らしげに持ち歩いていますが、内心ではどこに次の関心を向ければよいかわかっていません。動画を視聴した従業員と顧客が求めているのは、ホログラフィック・コンピューティングの未来に向けて計画を示してくれる経営者なのです。

――その計画とは、どうあるべきでしょうか。

 じきに社内から、次のような的を射た質問が上げられるはずです。「我が社は1つのブランドとして、顧客の真のニーズを理解するために時間を費やしてきただろうか」「ウェブ、ソーシャル、モバイルへの移行を通じて、迅速な製品開発の手法を磨いてきただろうか」。答えはおそらく「ノー」、「十分ではない」、「多少は」といったところでしょう。

 ですから、ホログラフィック・コンピューティングに備えるというのは必ずしも、ホログラムの製品や環境をつくることではありません。それを2015年中に実行するのは難しいでしょうし、多くの企業にとっては2016年でも無理でしょう。そうではなく、自社の文化、方針、慣行を顧客中心のイノベーション戦略に整合させること。それがホログラフィック・コンピューティングに備える方法なのです。

HBR.ORG原文:What HoloLens Has That Google Glass Didn’t January 29, 2015


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スコット・ベリナート(Scott Berinato)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・エディター