前回ご紹介したアクティビストCEOの例であるGEやサムスンといった企業はまさにこうした施策をトップの強力なリーダーシップの下推進してきている。また初回にご紹介した最近CMOを導入した日本企業の狙いも、こうした領域でトップ・マネジメントの「分身」としてCMOが強力にリーダーシップを発揮してもらおうというケースが多い。

定石4:社員の顧客志向、市場意識を高める

 社員のマーケティング・マインドを高める意識改革も、経営トップが主導すべき大切な領域と言えよう。マーケティングの教育・研修などの充実に予算を投じることも不可欠かもしれない。ただ、社員のマーケティング・マインドを高める上でも、まず経営トップ自身が強烈な顧客志向や市場意識を持つ必要があろう。

例えば、ヒンドスタン・ユニレバー社では、役員候補は、全員インドの農村で8週間のプロジェクト勤務を義務付けられていると言われる。幹部として、ローカル消費者のニーズを肌で感じられるようにさせた上で、役員登用を検討するということらしい。また多くの日本企業で、英語ができなければ、管理職にはなれないようにする制度を導入し始めている。また英語以外にもう一か国語の習得や、海外市場での駐在勤務経験を管理職昇進に義務付けようとしている企業があるのも、こうした「上からの意識改革」の表れであろう。

定石5:必要あれば自分の分身-CMOを任命する

 以上述べた役割を自身で直接行うのが難しい場合、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を任命し、自分の分身として、任せるのも一法かも知れない。

 嶋口充輝教授は、「CMOは経営マーケティングの実践的リーダーであって、CMOには、次期経営トップ候補を任命すべき」と述べているが、実際CMOという役職は簡単なものではない。その理由は、適任者が限られることである。ミッション自体が経営者トップの役割を相当含んでおり、普通の役員では勤まらない。他の役員と最低でも同格、できればそれ以上のパワーが必要なタフなポジションである。CMOが普及している米国でもCMOの任期は平均2~3年という比較的短期で退任しているというから、やはりCMOは生易しい仕事ではなさそうである。

 CMOの成功事例を調べると、CMO自身の頑張りもさることながら、社長・CEOなどの経営トップがCMOを全面的にバックアップしていることが成功要因として挙げられることが多いようである。経営トップにマーケティング改革への強い意志があり、色々な理由で自分自身ではやり切れない部分をCMOに部分的にゆだね、しかも陰に日向にサポートをするのが適切ということであろう。CMOへのマーケティングの丸投げはご法度である。