ここでの「お仕事は何ですか」という質問は、単なる社交辞令にすぎない。稀な例外を除いて、本当に知りたがってなどいない。あなたが相手の気を引くことができなければ、20秒間注意を払ってもらうだけでも寛大といえる。だが関心を引くことに成功すれば、相手はエレベーターのドアを抑えながら1日中でもあなたの話を聞くだろう。したがって、すべてを20秒間に詰め込もうとしてはならない。その代わりに、最初の猶予時間で「関心を向けてもらう時間を引き伸ばす」ことに努めるのが最善なのだ。以下でその原理を説明しよう。

1.冒頭のツカミで相手の不意を突く
 最も重要なことを、最初にやる。つまり相手の期待を裏切るのだ。ほとんどの人は「お仕事は何ですか」の質問に、「建築家です」といったありきたりな単文で答える。だが人間の脳は、興味深いことにしか注意を払わない。相手の興味を引きたければ、目立つ必要がある。言葉による不意打ちを食らわせれば、そもそもこの質問をするに至ったパターン化された思考プロセスを打破できる。そこには目立つ要素は一切含まれない。パターン思考が働いている間は、相手があなたを覚えるチャンスがほぼゼロである。

 相手の「目を覚ます」に当たり、私が使う自虐的なボディービルディングのジョークは多分あなたには使えない。そこがポイントだ。何か人とは違う、オリジナルなことを言う必要がある。相手の脳が楽々と自動処理するような普通のやりとりではない、あなたがユニークな人間であると否応なく思わせる何かだ。その筋書きを私が書いてあげたいが、不可能だ。あなた以外の誰にもできない。

2.質問によって問題提起をする
 言葉で揺さぶって目を覚まさせたら、次の目標は相手が自身と重ね合わせそうな問題を提起することだ。これは必ず、質問の形で発しなければならない。疑問文は常に、平叙文よりもずっと相手を引きつける。私のエレベーターピッチから引用すれば、「人々がコミュニケーションを取る方法は、メールやテキストメッセージやソーシャルメディアばかりになってしまった感がありますよね?」

 これに対して、単に「ええ」と応じる人もいれば、現代のテクノロジーがいかに不愉快かと文句を述べ始める人もいる。それでいい。相手に好きなように話をさせる。どちらにしても、私は相手と手を組んで共通の敵に立ち向かっているのだ。これは親密な関係を築く最も強力な方法の1つである(これに匹敵しうるのは「笑いの共有」だ)。しかし、この時点で相手が生涯の親友になってくれたと自信を持てない場合、親密さをさらに強める策がもう1つある。

3.「共感フレーズ」を言う
 共感フレーズとは、心に響く言葉や賢い名言、誰をもうなずかせるような印象的で共感を誘うフレーズだ。相手はこのようなフレーズに強く同意し、思わず「うーん!」とか「その通り!」と漏らすかもしれない。あるフレーズが共感を誘うかどうかを知りたければ、その文言をフェイスブックにテキスト画像、いわゆる「ミーム」の形で投稿して、「いいね!」や「シェア」がどれほど付くか、または#truth(真理)のタグで終わるコメントが付くかを確かめればいい。

 私の共感フレーズは、「私たちはかつてないほどつながっています。それなのに……かつてないほど分断されています」(私の経験上、身をもって知っている)。さらに親密度を上げたければ、上級テクニックを試してみるといい。「それなのに」の後で一呼吸置くのだ。あなたがパンチラインを言う前に、聞き手自身が頭の中で考え出す猶予ができる。そうなれば相手はフレーズに当事者意識を感じ、頭の片隅でそれを自分自身で考えたのだと思い込む。その後、あなたが相手の考えていることを声に出して言うと、「賢人は皆同じように考える」という絆が生まれるわけだ。

 したがってこの時点で、私はすでに相手の期待を裏切り、かなり親密な関係を素早く構築した。しかも相手の質問にはまだ答えてすらいない。それは次のステップだ。