トライセクターイノベーションが
日本を成長市場に

藤井 日本でも最前線ではリソースのシフトが始まっているのですね。トライセクターイノベーションが国内でもさらに加速していく機運を感じてきました。
 とはいえ、実際の企業の動きとしては、ソーシャルインパクト投資を含めて、リソースは海外に向く傾向にあります。日本は成熟市場あるいは右肩下がりの市場であり、企業が新たに投資すべき市場は、一定の経済成長率・人口増加率のある新興国や米国が優先されるのです。この点について小沼さんはどうお感じになりますか。

小沼 確かに、留職プログラムは日本よりも海外、とりわけ新興国で始めるほうが企業から受け入れられやすいという面はありました。新興国や途上国にある貧困、環境汚染、急速な都市化、水問題などの社会課題は深刻かつ喫緊であり、そこに日本の企業が力を傾けることには意義があると思います。
 一方で、トライセクターイノベーションという観点では、パブリックセクターが担っていた役割をトライセクターで担うようになってきている今、日本はまだ成熟市場ではないという見方もできます。実際、世界の中での“課題先進国”たる日本が抱える超高齢化、東京一極集中化、自然災害、エネルギー問題などには、その後のグローバルな解決策の展開余地を考えると、企業から見ても十分大きな潜在市場があるでしょう。こうした考え方から、実はCFでも昨年から人材派遣会社と組んで、国内を派遣先とした留職プログラムもスタートしました。

藤井 依然巨額な税金等が投じられている日本の社会課題に、トライセクター連携でイノベーティブな課題解決モデルを産み出すことが必要であり、それによって産まれる資金の還流が、企業にとっての新たな利益の源泉になりえる。企業には、この利益を優位に獲得するために、CSVの発想でトライセクターイノベーションをリードすることが求められます。
 ソーシャルインパクト投資のように、ある社会課題解決への取り組みがパブリックセクターの投じるコストを中長期的に低減し、それを源泉に経済的なリターンを事業者に戻す仕組みへの認知が進むと、課題先進国=成長市場の認識がより高まっていくかもしれませんね。

小沼 CFもその動きをリードしていきたいですし、留職の卒業生たちもそれを牽引する人材になってくださることを願っています。

藤井 時間軸としては、「ソーシャルインパクト投資が国内で当たり前になる時代」のターゲットは2020年と設定されていますし、東京オリンピックのポジティブなムードもあり、各セクターでも2020年を1つの節目に色々な動きが始まっています。
 一方でポスト2020を考えてみると、2020年を境に東京都でさえ人口が減少し始め、労働力も大きく減少していく中で、日本ではより様々な社会課題が顕在化してくることが懸念されます。これからの5年、トライセクターによるイノベ―ティブな社会課題解決がますます重要になってくるでしょう。小沼さんは、2020年の日本をどのように描いていらっしゃいますか。

小沼 私は、2020年の日本は、極めてポジティブで明るい未来だと思っています。世界で日本ほど先進的な課題を抱えた国はない中で、「企業、行政、NPOが混ざり合って真剣に課題と向き合い、それぞれのセクターの能力をいかんなく発揮しながら、想い・情熱を持って課題解決に突き進む」という世界を描いています。
 たとえば、あるメーカーが、介護分野のエキスパートであるNPOと協力して高齢者が抱える切実な課題を把握し、その解決につながるイノベーティブな商品を開発する。行政がその市場展開をサポートすることで、全国に一気に広がる。そして、行政からNPOに出向した人材は、現場で得た生の社会ニーズに応えた法制度の設計を行う。
 あるいは、日本発の国際協力NGOが、途上国で日本のメーカーと共同でイノベーティブなビジネスモデルを開発し、それがリバースイノベーションとして、先進国を含む世界中の市場で受け入れられていく。
 そして日本は他の国から尊敬され、世界から必要とされながら、世界の課題解決に大きく貢献できている、そういう未来です。

藤井 ぜひ実現したい世界観ですね。2020年を一つのターゲットに、私たちもトライセクターの連携を産みながら、色々と仕掛けていきましょう。2回にわたりお話しくださり、ありがとうございました。