3.自分の意図を明確に、かつ柔軟に示す
 最初から、すべての答えを完全な形で用意しておく必要はない。だが「イノベーションのリーダーとして、全社戦略の達成にどう貢献できるのか」については、着任したその日から見解を持っていなければならない。すでに進行中のイノベーション案件については、その範囲を拡大させる方法を検討しよう。その際にCEOやCTOに対して、その職域を侵すつもりはないことを理解してもらい、彼らの支援を引き出す必要がある。ガンビルによれば、こうした信頼関係を築く良い方法は、解決策や代替案を示さないまま問題点を指摘するのを避けることだ。「CEOの周囲には、問題点を指摘する人たちは大勢いる。重要なのは、1日も早く問題解決者としての自分を確立し、良き相談相手として経営陣に認めてもらうこと」であるという。

 新規アイデアの創出、他部門のプロジェクトの支援、全社的なイノベーション文化の醸成――これらのバランスをどう取るかを考えよう。これらはお互いに関連するが、やるべき仕事はまったく違う。最初の自分の見解にこだわりすぎず、個々の案件に合った方法を柔軟に採用していこう。

4.自社を取り巻くイノベーションの状況について見解を持つ
 ウォルグリーン、キャンベルスープ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ウェイトウォッチャーズなどでイノベーションと戦略を主導してきたコリン・ワッツは、「顧客の発想や視点に基づいて、自社の市場を明確に定義すること」を推奨している。一般に企業は、「提供する製品」や「参入している分野」で自社の市場を定義しがちだ。しかし顧客は常に、自分の課題を解決してくれる最良の方法を探しており、その解決策がどの業界やカテゴリーのものかは気にしない。顧客がどのように製品やサービスを選んでいるかを理解すれば、従来とはまったく別のライバルたちが見えてくることが多々ある。そして自社の市場も役割も再定義され、事業の成功条件も変わってくる。

 またワッツは、隣接分野をよく見ることで市場を形成できる可能性があると言う。「もはや単独で存在する市場はない」。イノベーションのレンズを通して周囲を見れば、自社の中核事業が見落としたかもしれない変化の兆候に気づきやすい。

5.短期と長期の取り組みから成るイノベーション・ポートフォリオの第一案を作成し、素早い失敗による損失も想定しておく
 あなたの主な職務は当然ながら、一連のイノベーションの取り組みを前に進めることだ。すでに進展しているプロジェクトもあれば、今後の展開を待っている事業アイデアもあるだろう。あるいは社員の頭の中に、荒削りな構想があるかもしれない。いずれにせよ、着手すべき取り組みを最初の100日間で明確にする必要がある。そこにはかなり具体的なもの、例えば新たなテクノロジー製品に最も適した市場の特定なども含まれるかもしれない。あるいは、より幅広い事業機会の探索かもしれない(単に「ウェアラブル」など)。特定の組織能力の開発でもよい。例えばワッツが「今後長きにわたって見返りが得られる投資」として勧めるのは、「アイデアや製品を素早く安価で試験できる組織能力」の構築だ。

 賢明なイノベーションリーダーは、これから探求を始める長期的な取り組みに投資する一方で、早期に結果を出して信頼を得るために短期的な事業機会にも取り組む。もしイノベーションのポートフォリオに短期的なプロジェクトしかなければ、中核事業に携わる人々の一部は、「イノベーション部門ではなく自分たちの事業部で手掛けてはいけないのだろうか」と疑問に思うだろう。そしてそのポートフォリオでは、最もエキサイティングで破壊的なアイデアが見落とされている可能性が高い。だが反対に、もし長期的な案件しかなければ、その実現に向けて長らく取り組んでいるうちに、自社の忍耐力が途切れてしまうリスクがある。

 そして早期の成功を望むならば、速やかに失敗し損失を被ることを避けてはいけない。真のイノベーションに求められるのは、失敗を恐れず、そこからの学びに価値を見出すことである。とはいえ、失敗は誰にとっても怖いものだ。1度の損失がイノベーションのパイプライン全体に悪影響を及ぼすことのないよう、十分な数の案件を進行させておこう。1つの取り組みを「素早くやるのも、安くやるのも、手堅くやるのもいい。だが3つすべてはできない」とワッツは言う。失敗が明らかになったプロジェクトの中止を初めて決める時、支援してきた幹部とあなたはその決断を、堂々と誇りを持って宣言しよう。

 これらを100日間でやるのは大変だと思われるだろうか。その通りだ。イノベーションには組織を前向きに変革する力があるが、たやすいものではない。


HBR.ORG原文:The Chief Innovation Officer's 100-Day Plan September 17, 2014

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スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイトのマネージング・パートナー。同社はクレイトン・クリステンセンとマーク・ジョンソンの共同創設によるコンサルティング会社。企業のイノベーションと成長事業を支援している。主な著書に『イノベーションの最終解』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションへの解 実践編』(ジョンソンらとの共著)、新著に『ザ・ファーストマイル』がある。

ロビン・ボルトン(Robyn Bolton)
イノベーション戦略を専門とするコンサルティング会社、イノサイトのパートナー。