インタビューでは決して語られない言葉を引き出すには

 一方で、インタビューをしていて言葉の限界を感じることもあります。所詮、言葉は思考の表出の一面でしかなく、発せられた言葉は、その人の思考の氷山の一角にすぎません。もっと深くその人の思考や想いを引き出すことができればどれだけ素晴らしいでしょうか。

最新号で新しい連載をスタートさせましたが、これはそんな想いから生まれたものです。タイトルは「リーダーは『描く』」。毎回、経営者や各界のリーダーに登場いただき、「働くうえで大切にしていること」をパステル画で表現していただく、という企画です。この企画は実際に絵を描いていただきます。ワークショップスタイルで趣旨の説明や絵を描く上での説明などを入れると、取材は2時間半にもなります。多忙な経営者の方に登場いただくのは困難が予想されましたが、第1回目はヤフー社長の宮坂学さんが応じてくださり最新号(5月号)の紙面を飾りました。

 描いていただいた宮坂さんの絵はスケールの大きな地平をイメージするものでした。ご自身は、「働くこと」を絵にするに当たって、「自然」という概念に行き着いたそうです。人にとって自然な環境こそ、ポテンシャルを最大に引き出せるのではないか。その想いを絵にされたそうです。詳しくは本誌をご覧になっていただければ幸いです。

 もし宮坂さんにインタビューさせていただき「働くうえで何を大切にしておられますか」と質問したら、はたして「自然」という言葉を引き出すことができたか。描いていただいた絵を見ながら、そんなことを考えました。

 思考は言語を通じて表出されますが、思考のプロセスに必ずしも言語が介在しているというわけではありません。普段インタビューで目指している「語られたことのなかった言葉を引き出す」という目的が、このような「描く」という作業をしてもらうことで少し実現できたかもしれません。

 この連載はまだまだ何が生まれるかわかりませんが、幸いにも多くの方の賛同を得て登場していただくことが決まっています。次号からもご期待いただければ幸いです。(編集長・岩佐文夫)