僕は、「曖昧な組織」をテーマにしています。全員がつながっていて、相互に助けあうことで成り立てばいい。だから、良いのか悪いのか、社内には派閥というものがないんですよ。開発本部には数百人いますが、その全員が部や課で分かれることなく、全体として動いています。

 プロジェクトが新しく始まると、これまで一緒にやってこなかった人と組むこともある。何か困っていることがあると、全員で助け合うのが当たり前になっているんです。そういう文化が染み付いています。前回お話したような、ガチガチに硬直した、細分化された組織を反面教師としているところがあります。そうならないような下地をつくってきました。

コンセプトとテーマがぶれたらアウト

――「情熱大陸」を拝見しました。「モジポップン」というアプリ制作の過程で、チームメンバーから出た「容量を少なくするために、ステージ数を削りたい」という提案をあっさり却下していらっしゃったのが印象的でした。

「僕は、『曖昧な組織』をテーマにしています。全員がつながっていて、相互に助けあうことで成り立てばいい」

 容量が厳しいことはわかっていました。あのゲームは、すべてを1回でダウンロードして遊んでもらう、“落としきり”のゲームなので、ファイルサイズが大きくなるのは良くない。ただ、ステージ数を増やすと、それだけグラフィックスも音楽もいろいろなものが増えていきます。

 実を言うと、「モジポップン」にはかなり容量を食う技術を入れているんですよ。それは、「半透明」です。一見、半透明に見えるだけですが、CPUからなにからとにかく容量を使うんです。海が舞台なので、それでもあえてエフェクトを半透明にしました。

 無料ゲームは、最初に「おもしろくなさそう」と思われたら終わりです。お金を出して買うゲームソフトであれば、最初が少しくらいつまらなくても、もとをとるためにがんばってやり続けてもらえます。でも、無料アプリはそうはいかない。だから、プレイする瞬間に興味を引くのがすごく大事なんです。おもしろそうな印象を出すためには、半透明のエフェクトが必要でした。

――ステージ数を減らさないという判断をされたのは、なぜですか。

 1つひとつのステージを進めていく達成感が、ゲーム全体の満足感につながるからです。最初に離脱されるのも防ぎたいですが、さらに欲を言うと、最後まで楽しくやりきってほしい。ゲーム全体の遊びごたえ、ユーザーの満足感を考えるとステージ数を削ることはできないと思いました。

――ゲームをつくるときに必要なのは、たくさんの人の意見を取り入れることですか。それとも、1人のクリエイターのこだわりでしょうか。

 両方必要ですよね。ガンホーのゲームづくりは、最初は2人で始まります。基本的に、僕と誰かの2人です。「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」で言うと、僕と山本という担当本部長で企画を練っていきました。ゲームで最も重要なのは、コンセプトとテーマです。そこがぶれたらアウト。ぶれないようにするために、自分が全タイトルの製作総指揮をとっているとも言えます。

――チームを編成するのは、コンセプトとテーマが固まってからなんですね。

 そうですね。コンセプトとテーマ、根本的なゲームザインまでは固まっている状態にしておきます。そして技術周りのことを詰める段階になったら、他のメンバーにも入ってもらいます。細かいところの改善に関しては、みんなの意見をどんどん取り入れていく。開発中のタイトルを社内でテストプレイしてもらい、意見を吸い上げていくこともします。この段階では、プロジェクトに関わっていない人の意見も取り入れていきます。開発メンバーの家族の意見なども入れる場合がありますよ。