さらには、ビール業界でも共創コミュニティが生まれている。サッポロビールは、2012年8月に開設したFacebookページ「百人のキセキ」で、毎週金曜の20時にライブ会議を行ない、のべ12,000名のビール愛好家とともに「一人でとことんじっくり味わうビール」を開発した。キリンビールもまた、2013年8月にFacebook上に「キリンビール カンパイ会議」を開設し、20~34歳の神奈川県の若者200名とともに、「海の見える公園で、潮風を感じながら飲む軽いビール」を開発している。両社を比較すると、サッポロビールは自社ファンに限定せず、ビール愛飲家を広く集めていたのに対し、キリンビールは、自社のコアなファンに限定していたという違いがある。一方、官能検査や試飲はイベント形式でリアルな場を設定して行い、期間やチャネルを限定して販売していた点は共通している。

 以上のように、近年企業が行った複数の共創事例を見てくると、興味深い発見がある。第1に、共創コミュニティを始めるハードルが非常に低くなっている。とりわけFacebookやtwitterといったソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS) に代表されるソーシャル・メディア上では、消費者の情報が素早く、膨大に蓄積される。企業は、こうしたサイトを自社で運営するだけでなく、クックパッドのようなコミュニティ運営を行う企業と提携し、共創による開発をより効率的に行うこともできる。

 一方、第2の特徴として、参入障壁は低いものの、戦略的な位置づけとしては、単体で多大な収益を獲得するというよりは、テスト・マーケティングや顧客との接点の拡大、あるいはブランディングの一環と位置付けられていることが多い。開発される製品も、今まで世の中に存在しなかった革新的な新製品ではなく、既存製品の改良やニッチな商品に留まる傾向にある。

 なぜオープン・イノベーションで革新的な製品を生み出すことは難しいのだろうか。次に、共創コミュニティの直面する3つの課題と処方箋を整理していこう。