クエーカー教徒(プロテスタント系で平和主義を特徴とする)は、とりわけ強力な傾聴法を実践している。それは「クリアネス委員会(clearness committee)」と呼ばれ、著述家のパーカー・パーマーによれば次の信念に基づくものだ。「私たちは誰でも、自分のなかに内なる教師、真実の声を持っている。自分の問題に対処するために必要な導きと力を、それらが与えてくれる」。仕組みを以下に説明しよう。

 クエーカーのコミュニティの誰かが、重大な判断事項や個人的な問題・疑問を抱えている時、その人は「フォーカス・パーソン」として会合の開催を申請する。コミュニティの1人がファシリテーターとなって申請を取り上げ、少数厳選のメンバーを招いて委員会を構成する。

 メンバーたちは最初に、徹底的な秘密厳守の誓いを立てる。会合の後も、フォーカス・パーソン本人から特に望まれない限り、会合についてけっして口外してはならない。メンバーはメモを取ってもいいが、会合が終わる時にフォーカス・パーソンに手渡さなくてはならない。

 委員会は邪魔が入らない場所で会合を持ち、そこでフォーカス・パーソンが10分間、自分の問題とそれに関連する背景情報について簡潔に話をする。委員会はフォーカス・パーソンが話しやすい環境を整え、それをメンバーのコミュニケーション上の快適さよりも優先する。たとえばメンバー同士で話すことや大声で笑うことはせず、本題から逸れた雑談もしない。電話もコンピューターも禁止。フォーカス・パーソンをどぎまぎさせるような、矢継ぎ早の質問もしてはならない。

 続いて、2時間の話し合いを持つ。ただしその間メンバーは、フォーカス・パーソンに対してのみ、「誠実な質問」だけを通して話しかけてよい。これは答えを誘導するような質問であってはならない。たとえば「こうなった原因は、あなたが〇〇したからだと思ったことはありますか」というように、質問中に答えが含まれているものはNGである。一方、誠実な質問とは、メンバーがあらかじめ答えを知りえないもの――たとえば「こんな風に感じたことは、前にもありましたか」というような問いである。誠実な質問は単に尋ねるだけで、何かを主張することではない。

 フォーカス・パーソンは話し合いが終わる前に、メンバーにこれまでの内容について振り返る時間を与えることができる。ここでも、意見は一切出してはならず、振り返るだけだ。会合が終わる5分前にメンバーは、本音をさらけ出してくれたフォーカス・パーソンの強さと勇気を称えてよい。ここに至っても、助言や示唆はまったく与えない。大事なのは、フォーカス・パーソンがその場を去り、自分の内なる声に耳を傾けて、導きを得ることだからだ。

 クリアネス委員会は、聞くという行為を革新する素晴らしい方法だ。日常的に実践するには厳格すぎる、あるいは手順がややこしすぎると思うかもしれないが、企業でチームのコミュニケーションに活かせる面が多々ある。

 たとえば、チームにおいて誠実な質問だけをするというルールを決めてもよい。そうすれば、話をややこしくさせる誘導的な質問を避けられる。また、チームの誰かが問題を抱えて相談に来た時は、善意によって浅はかで的外れな解決策をすぐに示す前に、質問によってジレンマの核心を明らかにしてみよう。さらに、会話中にもっと質問をすること、そして会話時間の少なくとも半分を傾聴に当てることで、聞く割合を増やすことができる。

 結論を言おう。新たな次元で従業員との絆を強めたい、もっと影響力のある人間になりたい、新たな力を見出したい――そう望むリーダーに必要なのは、耳を傾けることなのだ。


HBR.ORG原文:An Exercise to Become a More Powerful Listener November 6, 2014

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グレッグ・マキューン(Greg McKeown)
シリコンバレーでリーダーシップと戦略のアドバイスを行うTHIS Inc.のCEO。2012年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」に選出された。著書には『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版)およびMultipliers: How the Best Leaders Make Everyone Smarterがあり、ともにベストセラー。