小さき者たちの戦略を笑うことはできない

「経営学はビジネスの役に立つのか」という想いの裏には、「成功するための正解が知りたい」という強い期待が隠れているようにも感じる。

 たしかに書店に足を運べば、『○○で成功する7つの方法』『××したいならこれをやりなさい』と、唯一の成功法則を説く作品で溢れている。だが、改めて言うまでもないが、ビジネスの世界において、これだけやれば確実に成功できるモデルなど存在しない。誰しもがこれを真理と認めながら、それでも“正解”を期待してしまうのは不思議な現象ともいえる。

 成功を約束された方法はないが、失敗しない方法はあるかもしれない。それは、何もしないことである。誰かの後追いではなく、独自のビジネスを実践する起業家たちは、それぞれ何らかのリスクを負っている。本書には、スマートとは言いがたい経営者も何人か登場する。だが、答えのない道に果敢に挑戦し、成果を挙げる彼らを笑うことなどできないはずだ。

 一橋大学の楠木健教授が巻末に解説を寄稿されており、「中小企業向けの本ではない」と書かれていた。400ページ近い本の内容をわかりやすく噛み砕いていることはもちろん、そのメッセージにも納得だ。堅実さのなかにも確固たる志があり、試行錯誤を繰り返しながら成長を遂げる小さき者たちの戦略からは、むしろ大企業の人たちが学ぶべきことが多いのではないか。

 経営学の入門書として、中小企業の経営者が競争優位を築くためのヒントとして、そして、大企業のビジネスパーソンが自社のあり方を見つめなおす材料として、さまざまな層の読者に刺激を与えてくれる一冊である。