これら一連の研究結果を総合するとこうなる。信頼と相互協力を重視するリーダーシップを追求すれば、より幸福な組織文化を築ける。そのような職場では、従業員が互いに助け合い、その結果長期的に生産性が高まる。したがって親切な上司のほうが出世しやすいのも当然だろう。

 では、思いやりに基づくリーダーシップや職場の要件とは何か。 こちらのほうが難しい問題だ。多くの企業は、在宅勤務や各種手当などの特典を充実させようとしているが、ギャラップの調査によれば、フレックスタイムや在宅勤務のような特典があろうと、従業員の幸福度に最もつながるのはエンゲージメント(会社と従業員の感情的な絆、職場や仕事への思い入れ)なのだ。そしてほとんどの研究によれば、思いやりを大切にする職場では物質的な報酬よりも、リーダーの特性のほうがエンゲージメントを高める。特性とはたとえば、価値観や倫理を守る誠実な姿勢や、他者への偽りなき親切心、自己犠牲などである。

 結論は明白だ。私たちは職場において、親切をもっと評価すべきなのだ。ノートルダムで行われたある研究では、気がめいるような結果が示された。男性は「感じのよさ」(素直、利他的、従順、控え目などの特徴に代表される)が目立つ人ほど収入が低い傾向があるというのだ(英語論文)。女性の場合、感じのよさは収入と無関係だった。このため研究者らは、性別の規範に従わない人が罰せられているのではないかと考えている。ここから学ぶべきは、「男たるもの冷酷であれ」ということではない。私たちの誰もが、規範を変えるよう努力すべきなのだ。スキルを少し身につければ、他人に利用されたりお人好しになったりせず、好感の持てる人間になれる。そうすれば私たちは、職場でもう少し幸せになれるかもしれない。


HBR.ORG原文:The Hard Data on Being a Nice Boss November 24, 2014

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エマ・セッパラ(Emma Seppälä)
スタンフォード大学の心理学研究員。同大学で思いやりと利他主義研究教育センターの共同ディレクターを務める。企業の福利に関するコンサルティングを行い、科学ジャーナリストとしてハフィントンポスト紙や自身のウェブマガジン「フルフィルメント・デイリー」などにも寄稿する。