彼らの実験の1つを見てみよう。架空の旅行ウェブサイトを開設し、被験者にボストン発ロサンゼルス行きの航空券を検索してもらった。あるグループには、検索の進捗度が色で示される典型的なプログレスバーのみを見せたが、別のグループにはオペレーションの透明性を体験させた。航空会社ごとの進捗度を個別に、「現在、デルタ航空を検索中…」「現在、ジェットブルー航空を検索中…」と表示し、さらに検索途中での最安値の航空券の一覧をリアルタイムで見せたのだ。最終的には全員の被験者が同じ航空便と料金の検索結果一覧を提示されたが、透明性を体験したグループはプログレスバーだけのグループに比べ、サービスの質をかなり高く評価した。また、瞬時に検索結果を表示するサイトと、時間がかかっても検索過程を表示してくれるサイトのどちらが好ましいか尋ねると、ほとんどの人は後者を選んだのだ。

 次に、「デフォルト・バイアス」の例を見てみよう。人間は複雑な選択をするのを嫌がって避けようとする。そのため、実際には他の選択肢を検討することがさほど面倒でない場合でも、最初から与えられている選択肢を選びがちである。こうした人間の性質を理解している企業では、雇用主が提供する退職貯蓄制度に加入するか否かを従業員に確認する際、加入をデフォルトとして提示する傾向が高まっている(英語論文)。新規採用者を自動的に貯蓄制度に加入させる企業が増えており、老後の貯蓄に関心のない従業員は、制度に加入しないことを自らの意思で選択しなければならない。たとえ自分に有益だとわかっていても、人間には重要な行動を先延ばしにする傾向がある。企業はそれを利用して、貯蓄制度への加入者数を大幅に伸ばしているのだ。

 これらの例を見ると、組織で何かがうまくいかない主因は、人々に内在する一連のバイアスに負う面が少なくないとわかる。つまりバイアスの存在と原理がわかれば、組織の問題を効果的に解決できるということになる。マネジャーとは単にリーダー職を意味することが多いが、同時に設計者でなくてはならない。仕事をどう設計すれば人々の行動様式が改善され、従業員や顧客、組織の便益につながるかを考えるのだ。(我々の以前の記事、「人の考え方を変えるより、『意思決定の環境』を変える方が簡単だ」および「その改革施策はそもそも有効か? 『実験による検証』で失敗を避ける」も参照。)

 これを体系的に行うためには、2つのステップが必要だ。まず大切なのは、組織内で起きている問題の根本原因を把握すること。それはモチベーションの欠如なのか、あるいは認知的バイアスのせいだろうか。

 たとえば、あなたのチームで重要顧客への納品に遅れが生じたとしよう。チームのメンバーに話を聞いてみれば、仕事に対する意欲の欠如が明らかになるかもしれない(モチベーションの問題)。しかし、この納期なら守れるだろうと過信していたことが判明する場合もある(認知バイアスの問題)。後者が原因であれば自動的に、作業の完遂までに必要な時間をもっと多く見積もることが解決策となる(これは、マイクロソフトで成功した方法だ)。

 次のステップは、バイアスの悪影響の低減や排除を図るために選択設計の変更を考える時、そのコストとメリットを慎重に検討することだ。ある状況では、意思決定をする前にもっと議論を促すようにプロセスを変えることが解決策となるかもしれない。グループでの意思決定の場なら、たとえばリーダーがメンバーの誰かを「悪魔の代弁者」に任命して厳しい質問をさせるなどの方法だ(「自分たちの計画が間違っていると示唆するデータはないだろうか?」など)。あるいは、チームに振り返りと検証の機会を設け、自分たちの行動が計画に沿っているか考えさせるだけでよいかもしれない。また他の状況では、先に述べたデフォルトの例のように、自動的にバイアスの悪影響を排除する新たなプロセスを設けるほうがよい場合もあるだろう。

 経営幹部はこれら2つのステップを考慮すれば、事業のさらなる成功を阻むバイアスの影響を減らすことができる。


HBR.ORG原文:Identifying the Biases Behind Your Bad Decisions October 31, 2014

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ジョン・ビシアーズ(John Beshears)
行動経済学者。ハーバード・ビジネススクール助教授。経営管理論を担当。

フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。著書に『失敗は「そこ」からはじまる』(ダイヤモンド社)がある。