組織の「心拍数」を下げないこと

――どんな企業にも共通する、生産性改善のアイデアはありますか。

 しいて挙げるならば、「7人ルール」でしょうか。ほとんどの会議が、人数が7人を超えると、1人増えるごとに生産性が10%下がります。つまり、17人いればゼロになる、ということですね。単に情報共有の会議ならばいいのかもしれませんが、意思決定の場には不向きです。

 また、組織には「心拍数」があります。創業者がまだCEOとして健在な、ある急成長中のベンチャー企業の例を挙げましょう。組織規模が急拡大したために、以前は週1回行っていたマネジメント・ミーティングを、月に1回、土曜にまとめて8時間行うことにしました。参加メンバーは25人に上ったため、ひとりの持ち時間は30分もありません。そのうち8時間では足りなくなり、10時間、12時間と会議時間が増えていきました。さて、それで何が起きたのでしょうか。

 意思決定のスピードが、週1回から月1回のペースに落ちたのです。さまざまな案件が決定されないまま次の会議まで保留とされるようになった、つまり、ひと月も先送りされるようになってしまったのです。そこで、会議のペースを週1回に戻し、また、人数も6人に絞り込み、議題を「何を決めるか」ではなく、「次にすべきこと」という未来志向に変えました。そして長期的な展望についての会議は別に設けるようにして、ようやく組織の心拍数が元に戻りました。

――組織の心拍数とは、面白い見方ですね。たしかに、スピードや時間に対する感覚の鈍さが招く問題は大きいように思います。

「時は金なり」です。金の無駄遣いには目を光らせるのに、なぜ平気で時間を無駄遣いするのでしょうか。たとえば、どの国、どの企業でも、会議に遅刻する人を見かけます。全員揃わないがために、会議の開始時間が遅れることも多いですよね。各人それぞれに事情があるのかもしれませんが、1時間のミーティングであれば、会議が5分遅れたことにより、生産性は8%下がることになります。8%、ですよ?

 たとえば、R&Dの生産性が8%下がったり、コスト削減が8%滞ったりすることなど、考えられますか? 大問題になりますよね。にもかかわらず、時間についてはそれだけ大きなロスが平気で許容されているというわけです。

 以前、同僚のマイケル・マンキンス連載でも触れましたが、週1回の無駄なミーティングが、年間30万時間の無駄を招いたり、上位レベルの役員を一人雇うことで、そのサポートをするために本人以外に約3人分の仕事が発生したりします。組織としての大きな無駄が、個々人の時間を奪い、それがたとえば顧客対応時間の減少を招き、業績低下につながっているとしたら、あまりにもったいない話ではないでしょうか。

 その意味でも、個々人の時間管理の重要性はもちろんのこと、組織にとっても時間管理は生産性向上にとってきわめて重要なファクターだと言えます。

(了)

 

【関連記事】
[連載]ベイン・アンド・カンパニー ホワイトカラーの生産性を高める

【ベイン・アンド・カンパニーの論文】
組織の時間も予算管理せよ
優れたマーケターは他部門を動かす
ドリーム・チームは機能するか
デジタルを取り込むリアル店舗の未来
「差別化」のビジネスモデル
意思決定を中心とする組織