巨額の予算をかけるテレビCMのキャンペーンであれば、既存の代理店が有利だろう。しかし今や、ネット広告に使われるマーケティング費はテレビを上回っている。ネットユーザーは細分化されているため巨額の広告費には見合わず、トンガルにとっては都合がよい。

 今後、代理店は自社独自のトンガルのようなプラットフォームを築き、既存の組織と融合させていくのかもしれない。もしくは、トンガルが代理店の持つ機能を取り入れながら進化していくことも考えられる。今日のニッチプレーヤーが、明日には市場における支配的なプラットフォームになっているかもしれない。

 人材プラットフォームは、人材を競争手段とするすべての企業に脅威を突き付けている。しかしより大きな挑戦の対象は、従来の雇用そのものかもしれない。つまり、人材を「雇う」よりも「束ねる」ことが重要となる未来だ。トンガルにも従業員はいるが、その任務はフリーエージェントたちを組織化し仕事を提供することだ。トンガルは世界中で最も有能(かつ最も低コスト)なフリーエージェントにアクセスする能力を持ち、従業員という形で雇うのに比べ、より少ないインフラでより柔軟にそれを行える。ある難題を解決できる人やチームになかなか出会えないならば、伝統的な採用活動と雇用形態に頼るよりも、大量の人々を招いて問題に取り組んでもらい、そこから最も優れたソリューションを選ぶほうがよい。トンガルのプラットフォームには、その機能があらかじめ組み込まれているのだ。

 従来の雇用形態に比べ、トンガルのようなプラットフォームは素早く学習する。消費者とコンテンツ制作者との接点にいて世界中の幅広い人材を活用するトンガルは、取引で生じる大量の活動をじっくり分析できるからだ。プラットフォームはクライアントの要求と課題に関する傾向を学びながら進化するため、新規クライアントは過去に生じた問題を回避できる。さらに、制作者たちが直面する問題についても学び記録していくので、新参のフリーエージェントは過去の事例を参照しミスの回避に役立てることができる。

 一方、既存の代理店は全工程のごく一部分しか見ないと思われ、それほど速く進化できない。今後、人材プラットフォームがニッチ分野に特化し、高度に組織化されたシステムとなり、従来型の雇用に伴う負担がない新たな仕組みとプロセスを生み出していけば、競争のあり方が変わるはずだ。

 ただし、最終的に人材プラットフォームが支配的な組織形態になるという保証はない。トンガルは高く評価されているが、なかには搾取的と見なされるプラットフォームもある。持続的なプラットフォームとするには、人材のコミュニティに生活の糧と進歩の機会を提供し続けなくてはならない。既存の雇用においては直接的な関係を通して提供できるが、人材プラットフォームについては今後の展開を持たねばならない。

 差し当たり既存企業には、人材プラットフォームについてもっと知ることをお勧めしたい。その成功例が出始めているクリエイティブ業界に身を置く企業であれば、なおさらだ。企業は人材プラットフォームに発注すれば仕事の向上が図れるだけでなく、その内幕を観察し、場合によってはその進化に影響を及ぼせるかもしれない。まだ人材プラットフォームが入り込んでいない業界も、まもなくだ。今は不器用なプラットフォームに見えても、彼らはすぐに学習する。そしてテレビ広告からネット広告への移行のような大きな変化に見舞われている業界では、仕事と人材をつなぐ新たなモデルに対する既存の雇用形態のもろさが明らかになるだろう。


HBR.ORG原文:Tongal, eLance, and Topcoder Will Change How You Compete November 7, 2014

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デイビッド・クリールマン(David Creelman)
クリールマン・リサーチのCEO。人材マネジメントに関する研究と執筆を行っている。

ジョン・ブードロー(John Boudreau)
南カリフォルニア大学マーシャル・スクール・オブ・ビジネスの教授。経営学を担当。同大学のセンター・フォー・エフェクティブ・オーガニゼーションズの研究ディレクターを兼務する。

ラビン・ジェスササン(Ravin Jesuthasan)
タワーズワトソンの人材マネジメント部門グローバル・プラクティス・リーダー兼マネージング・ディレクター。公認証券アナリスト。共著にTransformative HRがある。