IoTで必要とされる新たなアプローチ

●プロセスを迅速化する
 前述の通り、あるカテゴリーの機器を特定の業界に向け標準化するにあたり、15年は長すぎる。RFIDの問題の一部は、すべての参加組織が同一のデータ標準とフォーマットを採用しなければならなかったことにある。だが、今日のクラウド・コンピューティングとアプリケーション・プログラム・インターフェイス(API)を利用すれば、エコシステムの参加者は、異なる標準とフォーマット同士をすぐに変換・調整できるだろう。IoTの普及は早まるはずだ。

●ボトムアップの取り組みを重視する
 RFIDのアプローチでは、主に巨大組織を中心とする中央集権的なコラボレーションが原動力になった。いまや、アプリ、BYOD(私物のモバイル機器を仕事で使うこと)、ユビキタス・コンピューティングが全盛の時代だ。トップダウンによる標準化の取り組みと並行して、ボトムアップ型の導入にも注力することで、消費者中心かつ小規模企業主導によるIoTの普及を加速できる。

●ムチよりもアメを多用する
 ウォルマートが積極的にRFID採用に乗り出したことは、全体としてはプラスだった。しかし、全サプライヤーに対して2005年までに導入を義務づける、という同社の決定には多くのサプライヤーが抵抗を感じ、普及の動きが後退した。脅しのムチではなく、採用を奨励するアメを用いていればより効果的であり、あれほど後退は生じなかっただろう。

 RFIDの成功要因から学び、苦い経験の轍を避けたとしても、IoTの取り組みは一夜にして達成されるものではない。なぜならIoTの標準化には、いくつもの複雑なエコシステムを横断するコラボレーションと導入が必要であり、さらに各参加者にも技術の変更と組織改革が求められるからだ。しかしIoTの初期の歴史から学べば、進展を早めることは可能であり、また多くの企業のIoT利用を向上させることができるだろう。


HBR.ORG原文:Setting Standards for the Internet of Things November 21, 2014

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トーマス・H・ダベンポート(Thomas H. Davenport)
バブソン大学の特別教授。情報技術・経営学を担当。マサチューセッツ工科大学センター・フォー・デジタル・ビジネスのリサーチ・フェロー。デロイト・アナリティクスのシニア・アドバイザー。インターナショナル・インスティテュート・フォー・アナリティクスの共同創設者。共著に『真実を見抜く分析力』、近著に『データ・アナリティクス3.0 ビッグデータ超先進企業の挑戦』がある。

サンジェイ・サルマ(Sanjay Sarma)
マサチューセッツ工科大学のフレッド・フォート・フラワーズ1941 & ダニエル・フォート・フラワーズ1941記念機械工学講座教授。同大学Auto-IDセンターの共同創設者で研究を統括した。現在は同大学のディレクター・オブ・デジタル・ラーニングを務め、MITxおよびMITオープンコースウェアを監修している。