②量と質の軸からニッチ戦略を考える

 従来ニッチ企業というと、「優れた質的経営資源を持つ企業」を指した。しかしリーダー企業にとって、技術的に追随可能であっても、量的にペイしない状況もありうる。市場が小さく、利益率が低すぎるために、リーダーの高い固定費では利益がでない場合である。(この小ささは、事実である必要はなく、リーダー企業にとって、小さく見えれば良い。)

 下位企業は、リーダー企業に対して、技術等で質的参入障壁を築くだけでなく、規模的コントロールによっても、リーダーの参入を阻止できる。すなわちニッチ企業には、参入障壁を高める質的コントロールと、市場規模の量的コントロールの2つの武器がある。前者の質的面を、「質的限定」と呼ぼう。後者は、ニッチ企業は、リーダーにとって小さすぎる市場、コストのかかりすぎる市場を開拓し、その分野に集中して事業を行なうことができる。これを「量的限定」と呼ぼう。この2つの軸を組み合わせると、図のようなマトリックスを描くことができる。そして、マトリックス内には合計10のニッチ戦略が存在する。

 

 なお図表の左下は、量的にも質的にも限定が低いため、リーダー企業に同質化されてしまう可能性が高く、ニッチ戦略からは除外する。

10のニッチ戦略

 それでは、前項で述べた10のニッチ戦略について詳しく述べていこう。

①技術ニッチ

 技術ニッチとは、リーダー企業が技術を持っていない分野を開拓する戦略を指す。眼科領域に特化した参天製薬、歯科用医療機器のマニーなどがある。本稿ではマニーについて簡単に述べる。

 マニーは、「世界一の品質でないと市場に出さない」ポリシーを貫いている。その結果、虫歯の根を削る器具は世界シェア35%を超えトップ、眼科ナイフは、世界シェア30%を誇る。また0.14ミリ以下の手術針は、現在マニーしか量産できない。同社は1956年に、ステンレス製の医療用縫合針の製造を始めた。縫合針は手術中に折れると、人体組織を傷つけ、体内に残る危険がある。同社の針は他社が40分で研削する所、3か月かけて加工するなど、高いコストをかけても安全な商品を製造してきた。一時、流通チャネルが同じことから、医療用のメスも製造したが、技術が全く別のため撤退した。同社はこの失敗から、やらないことを明示している。それは①「医療機器以外扱わない」②「世界一の品質以外は目指さない」③「製品寿命の短い製品は扱わない」④「ニッチ市場(年間世界市場5千億円程度以下)以外に参入しない」というものである。 

 こうした明確な戦略により、売上高114億円、売上高営業利益率34%の高収益企業になっている。高い技術を持ちながらも、大手企業の参入を考え、製品スペックと市場規模を常に意識した経営を行っている。