リーダー企業の戦略定石

 これら企業の競争地位を踏まえた上で、競争しない戦略を考える際には、ある戦略を実行しようとする企業側の分析だけでは不十分である。競争には必ず相手がおり、企業が戦略を考えるにあたっては、相手企業が当該企業の戦略にどのように対抗してくるかも予測しなくてならない。その時、敵にまわすと一番脅威になるのが、経営資源の質・量ともに最大であるリーダー企業である。

 リーダー企業の戦略定石として、以下の4つが示されている。

①周辺需要拡大

 周辺需要拡大とは、市場のパイを拡大させることである。リーダー企業は競合企業に対して、量質共に優れた経営資源を持っている。したがって周辺に需要が拡大すると、その拡大した部分の需要が特許等により参入を阻止されない限り、既存市場のシェア相当分は獲得可能である。

 例えば、夜だけ歯磨きをしていた人が多いとすると、「朝も磨きましょう」というキャンペーンが当たれば、歯磨きの消費量は二倍になる。朝はライオン、夜はサンスターという人はめったにいないため、リーダーのライオンは、拡大された需要に対し、既存のシェア分は確保できる戦略である。周辺需要拡大により、売上の増加とシェアの維持が同時に達成される。

②同質化政策

 同質化政策とは、チャレンジャーがとってきた差別化戦略に対して、リーダーのもつ相対的に優位な経営資源によって、それらを模倣し、その差別化効果を無にしてしまう政策である。かつてパナソニックは、“マネシタ電器”と揶揄された時代もあったが、実はそれは、リーダー企業の王道とも言える戦略をとっていたのである。

③非価格対応

 非価格競争とは、下位企業の安売り競争に安易に応じないことである。すべての企業が揃って1割引すれば、一番利益が減る額が大きいのは、リーダー企業であるからである。例えば化粧品や油圧ショベルでは、資生堂やコマツから価格競争を仕掛ける事は、ほとんどない。

④最適シェア維持

 シェアをとりすぎると、独禁法等の問題により、かえってトータル・コストが高くなる場合もある。また、80%のシェアを85%にする営業努力は、40%のシェアを45%にする時よりも営業効率が悪く、利益率が向上しないこともありうる。それは、企業にとって「おいしくない顧客」をとらなくてはならないからである。「良い競争業者」(ポーター 1985)においしくない需要をとってもらった方が、自社の利益率は高まる。

 以上4つのリーダーの戦略定石を述べたが、経営資源が少ない下位企業からの攻撃に対して、リーダー企業が一番対抗しやすいのが、同質化政策である。逆に言えば、下位企業にとっては、保有する経営資源が劣るため、リーダー企業に同質化されない戦略を採る必要がある。