実は「競争しない」という選択肢は、これまでの経営学でも研究されてきた。例えばポーターは、競争戦略という領域を確立した研究者と言われるが、彼は産業組織論の考え方を経営戦略論に活かす事によって、理論化を図った。産業組織論では、産業の集中度が高いと価格が高止まりとなり、企業に超過利潤が発生し、そのような状態は望ましくないと考えられてきた。しかしポーターはその考え方を逆手に用い、どうすれば企業にとって高い収益性を得られる状態を作っていけるかという研究を行ったのである。

 そこでは完全競争から遠い状態を作り上げる程、企業は高い収益性を享受でき、それを判断するために、①既存企業間の競争、②売り手の交渉力、③買い手の交渉力、④新規参入の脅威、⑤代替品の脅威、という5つの競争要因を分析することを示した。すなわちポーターの競争戦略は、“競争しないこと”が企業の利益率に良い影響を与えることを示唆したのである。

 また一世を風靡した『ブルー・オーシャン戦略』でも、「競争のない市場空間を切り開く」「競争を無意味なものにする」ことを戦略の狙いとしている。

競争地位の類型化

 企業が競争戦略を考えるにあたって、「どの企業にとっても良い戦略」はありえず、例えば、競争地位によって望ましい戦略は異なる。既存の「業界リーダー企業」以外に、企業の立ち位置にはどのような類型があるのかを見てみよう(図表2参照)。

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図表2

 

 図表2でリーダーとは、当該市場で最大の経営資源を持つ企業で、質的資源の優位性も高い。チャレンジャーとは、リーダーに準ずる経営資源を持ち、リーダーとシェア争いを行いうる地位と意欲を持つ企業である。そしてニッチャーは、リーダーを直接狙う位置にはないが、独自の経営資源に優れる企業である。最後にフォロワーは、経営資源の質量共にリーダーを狙う位置にない企業である。